「糖質カット炊飯器」炊いたご飯に含まれる糖質の総量に大差なし。景表法違反のおそれも(国民生活センター商品テスト 2023年3月)

2023年10月31日に、消費者庁による糖質カット炊飯器の販売事業者4社に対する景品表示法措置命令が出されました。
・糖質カット炊飯器の販売事業者4社に景表法措置命令。みせかけの糖質低減率表示に「合理的な根拠」認めず(消費者庁 2023年10月31日)

「糖質カット炊飯器」については、措置命令に先立ち、国民生活センターが消費生活センターからの依頼を受け商品テストを実施し、3月15日にその結果を公表していました。
テストでは、実際に炊飯した場合と、うたわれている糖質の低減の程度を調べた結果、テスト対象銘柄5銘柄中4銘柄で、広告などでうたわれていた糖質の低減率には大きく及ばず、景品表示法上問題となるおそれがあると指摘しています。

PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)には、「糖質カット炊飯器」に関する相談が2017年度以降約6年間に250件寄せられており、「糖質カット炊飯器を使用しているが血糖値に変化がない」といった、品質・機能に関する相談も寄せられています。

「糖質カット炊飯器」に関する消費者相談状況、国民生活センターの行った商品テスト内容と問題視されたポイントおよび、事業者の見解を確認します。

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糖質を低減できるとうたった電気炊飯器の実際
(国民生活センター 2023年3月15日公表)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20230315_1.html
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PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)相談状況

2021年9月以降に急増。2017年4月以降受付、2023年1月末日までの約6年間に250件寄せられている。2022年度の1月末日時点では61件となっており、2021年度の同時期の件数143件から約6割減となっている。
寄せられた相談のうち、商品の品質・機能に関する相談件数は127件(約50%)。

(国民生活センター公表資料より抜粋)

【相談事例】
・糖質カットの炊飯器を購入したが、この炊飯器で本当に糖質が表示している程度、カットされるのか知りたい。私は糖尿病なので心配だ。(受付年月:2022年4月、相談者:60歳代女性)
・テレビで糖質カットの炊飯器の宣伝を見て電話で注文し、5日前に届いて使用しているが、1日3回測っている血糖値に全く変化がない。広告に血糖値の改善との説明はなかったと思うが、糖質カットにより血糖値も改善されるのではないか。(受付年月:2021 年 10 月、相談者:60 歳代男性)
・店舗で糖質カットができる炊飯器を購入し、説明書どおりに米を炊いたが、お粥だった。改めて説明書を確認し炊いたが同じだった。説明書には「ごはんは柔らかめに炊き上がる」とあったので、少なめの水で炊いたがまだ柔らかい。製造業者に連絡をして受け取った新品の同型品も同様であったため、返品返金してほしい。(受付年月:2022年5月、相談者:60歳代女性)

テスト概要

テスト実施期間
検体購入:2022年10月~11月
テスト期間:2022年11月~2023年1月

テスト対象銘柄・選定方法
2022年10月に、インターネットの大手通信販売サイト(Amazon.co.jp、Yahoo!ショッピング、楽天市場)で、「糖質カット炊飯器」で検索上位に表示された商品、
東京都、神奈川県内の複数の家電量販店、ホームセンターで販売されていた商品から6銘柄選定。

No.1 糖質カット炊飯器(AX-RC3)/販売元:AINX、輸入元:アジアインフォネット
No.2 IHジャー炊飯器 5.5合(RC-IJH50-W)/アイリスオーヤマ
N0.3 ヘルシーライスクッカー(RHR-1)/販売元:ウィナーズ
No.4 糖質カット炊飯器(SY-138)/ソウイジャパン
No.5 LOCABO(JM-C20E-W)/販売元:forty-four
No.6 糖質カット炊飯器(VS-HI01BE)/輸入元:ベルソス
比較対象:一般的なマイコン炊飯器1銘柄。

(国民生活センター公表資料より抜粋)

炊飯方式
いずれも、糖質カット炊飯する場合には、通常炊飯する場合よりも、同重量の米に対して水を多く加えるというもの。
1)一般的な炊飯器と同様なもの(No.2)、
2)釜の上にトレーを設置し、糖質を含んだ煮汁や蒸気となった水分を溜めるもの(No.1、6)、
3)二種類の釜を重ね、小さな穴のある上の釜から糖質を含んだ煮汁を下部に排出するもの(No.4,5)
4)②と③を併用したもの(No.3)

テスト結果にみる問題点

(1)糖質の低減に関する広告・表示について
商品本体、取扱説明書、外箱の表示、製造販売元等が運営するウェブサイトの説明や広告でうたわれている糖質の低減率等を調べた。
ウェブサイトの広告については、(No.6)の輸入元のウェブサイトに当該銘柄に関する情報がみられなかったため、これを除いた5銘柄について調べた。

・最大の低減率のみが記載されており、その炊飯条件の記載がない。
5銘柄全てのウェブサイトに糖質の低減率に関する記載あり、そのうち4銘柄(No.1、3~5)は、最大の低減率のみ記載されていた。
そのように炊飯できる条件については、1銘柄(No.3)のみウェブサイトに、糖質の低減率が使用する米の種類や加える水の量等の影響を受ける旨の記載あり。
4銘柄(No.1、3~5)の取扱説明書等には記載なし。
(炊飯による糖質の低減率は、使用する米の種類や加える水の量等の影響を受けると考えられる)

ウェブサイトに銘柄に関する情報がみられなかった1銘柄(No.6)については、取扱説明書、外箱には、具体的な糖質の低減率に関する記載なし。

《国センの事業者への要望》
糖質の低減率を広告・表示する場合には、消費者が適切な商品選択を行えるよう、そのように炊飯できる条件等の詳細を分かりやすく記載し、炊飯条件により実現可能な平均的な糖質の低減率を表示する。

(国民生活センター公表資料より抜粋)
(国民生活センター公表資料より抜粋)

(2)炊飯試験について
テスト対象銘柄を使い、取扱説明書に従って実際に炊飯し、「通常炊飯」と「糖質カット炊飯」の炊き上がりのごはんの重量、水分、糖質の量を比較した。
「通常炊飯」には、白米を標準的に炊くモードを、「糖質カット炊飯」のモードが複数あるものには、より糖質が低減されると考えられるモードを選択。
なお、5銘柄の低減に係る表示の比較対象は、銘柄により異なる。
「通常の炊飯器」(No.1)、「当社炊飯器」(No.2、4)、「食品標準成分表2015年版(七訂)」(No.3)、「同一炊飯器の通常モード」(No.5)
炊飯条件は、表3のとおり。

(国民生活センター公表資料より抜粋)

・広告でうたわれていた糖質の低減率を満たしていなかった。
全ての銘柄で、「通常炊飯」より「糖質カット炊飯」の方が、炊いた同一重量当たりのごはんの糖質の割合は約1~3割低かったが、5銘柄中アイリスオーヤマ(No.2)製品を除く4銘柄(No.1、3~5)で、広告などでうたわれていた糖質の低減率を満たしていなかった。

《国センの行政への要望》
これらは景品表示法上問題となるおそれがあると考えられるため、事業者への指導等を要望。

・商品の使用により健康保持増進等に効果があると受け取れる記載あり。
5銘柄すべてのウェブサイトに、商品の使用により「ダイエット」、「糖質制限」などの健康保持増進等に効果があると受け取れる記載がある一方、同じ量の炊飯前の米に対しては、「通常炊飯」と「糖質カット炊飯」とで、炊いたごはんに含まれる糖質の総量に大きな差はみられなかった。

《国センの事業者への要望》
これらの記載は消費者の誤認を招くおそれがあり、景品表示法上問題となるおそれがあると考えられるため、どれだけ食べた場合なのかなどの条件を提示する。

・炊き上がりのごはんの状態に、「柔らかさ」「水分」「重量」に違いがあった。
炊き上がりのごはんの状態は、全ての銘柄で、「通常炊飯」より「糖質カット炊飯」のごはんの方が柔らかく感じられた。
水分に関しては、「通常炊飯」より「糖質カット炊飯」のごはんの方が100g当たりの水分は約1~2割多い炊き上がりだった。  
いずれの銘柄も「糖質カット炊飯」のごはんの方が約1~3割、重量が重かったものの、その中に含まれる糖質(でん粉)の総量には大きな差はみられなかった。

(3)家庭用品品質表示法上の表示について
テスト対象銘柄は、家庭用品品質表示法 電気機械器具品質表示規程の「ジャー炊飯器」(炊飯機能と電子ジャーの保温機能を併せ持つ電気釜)に該当し、法令で表5の項目の表示が義務付けられている。
・家庭用品品質表示法上の必要な表示がないものがあり、同法に抵触するおそれ。
6銘柄中1銘柄No.1)において、「ジャー炊飯器ごとに、消費者の見やすい箇所に分かりやすく記載してすること。」と定められた項目(表5)のうち、以下の項目が、商品本体または取扱説明書に表示されておらず、家庭用品品質表示法に抵触するおそれがあると考えられた。
「区分名」、「蒸発水量」、「年間消費電力量」、「一回当たりの炊飯時消費電力量」、「一時間当たりの保温時消費電力量」、「一時間当たりのタイマー予約時消費電力量」、「一時間当たりの待機時消費電力量」

販売元(No.1)から、関係行政機関へ報告、確認を行い、2022年2月生産分より表示をしている旨の連絡あり。

(国民生活センター公表資料より抜粋)

事業者の対応

この発表を受け、テストに使われた製品のメーカー・販売事業者がそれぞれコメントを掲出しており、糖質の低減率に関する要旨をまとめました。なお、1社(ベルソス)のみ商品ページがなく、告知も出していません(2023年3月17日15時時点)。

AINX(No.1)
当社としては複数回の低糖質炊飯、検証テストを行ったうえで最大値のカット率を明記している。国民生活センターの試験結果は、検査時のお米の品種および炊飯合数が、当社の試験とは異なるため、数値が異なるものであると同センターに回答する予定。
糖質カット炊飯器に関するお知らせ(令和5年3⽉16⽇ AINX(株))

アイリスオーヤマNo.2)
国民生活センターが実施したテストのうち、当社製品では、広告などで表示している低減率を満たしている結果になっている。
糖質を低減できるとうたった電気炊飯器に関する一部報道について(2023 年3⽉16⽇ アイリスオーヤマ(株))

ウィナーズNo.3)
現行の表示
糖質カット率約1/3※
※標準糖質量(文部科学省 日本食品標準成分表2015年版(七訂)「水稲めし」精白米 うるち米)を元に、当社製品で炊飯した精白米の測定値((一財) 食品分析開発センターSUNATECにて測定[成績書番号:200721590-001-01])にて算定。お米の種類、炊飯時の水分量、新 / 古米等で数値は異なります。

補足/現行表示の算定方法
※標準糖質量(文部科学省 日本食品標準成分表2015年版(七訂)「水稲めし」精白米 うるち米 100gあたり)を元に、当該製品の【糖質カット】メニューで炊飯(0.5合時)したごはん100gの測定値((一財)食品分析開発センターSUNATECにて測定)にて算定した低減率。
0.5合時 約32.4%、1合時 約29.9%、1.5合時 約27.2%。[成績書番号:200721590-001-01、200721591-001、200624612-001-01]
お米の種類、炊飯時の水分量、新 / 古米等や炊飯するお米の量で数値は異なります。
RHR-1ヘルシーライスクッカー 糖質低減に関するお知らせ(2023 年3⽉ ウィナーズ(株))

ソウイジャパン(No.4)
糖質カット率については、SGS香港(SGSは検査、検証、試験、認証サービスを提供する外部機関)で検証テストを行っており、表記内容は当社で複数回の炊飯テストを行ったうえでの最大カット率を明記している。当社が実施した検査方法と国民生活センターが実施した検査方法、炊飯条件などが異なることが数字の違いの要因と考えられる。(現在、該当発表文削除)
「マイナビニュース」2023/03/17
糖質カット炊飯器の効果は? 国民生活センターの指摘に各社がコメント

forty-four(No.5)
糖質カット率について
該当製品でうたう糖質低減率「最大45%カット」は、外部の検査機関4社で、家庭使用環境を想定した、「通常炊飯」と「糖質カット炊飯」した際の100gのご飯の糖質量を検査しており、この表示を上回る検査結果が確認できているため、表示に誤りはない。国民生活センターの結果は慎重に評価するが、お米は収穫する地域、環境、品種、保存条件、精米時期などにより含有成分が異なり、糖質カット率に影響するため、炊飯条件次第では最大低減率に至らない場合もある。今後は注記を記載するなど改善策を実施する。

糖質の総量について
該当製品の炊飯試験では、一定量の糖質が米から水へ溶出することが確認されており、糖質の総量も変わると認識している。「通常炊飯」と「糖質カット炊飯」とで、含まれる糖質の総量に大きな差がないとする国民生活センターの結果については、炊飯条件の違いによる影響などを慎重に評価する。
(2023年3月16日 【お知らせ】弊社製品の糖質カット率について)

2023/03/24【お知らせ】弊社製品の検査結果資料について
現行モデルLOCABO(JM-C20E)Intertekによる検査結果資料(2022/8/10)

広告でうたわれていた糖質の低減率を満たしていなかった4銘柄について、いずれの事業者も、検査時のお米の品種や炊飯合数、炊飯条件等が、当該事業者の試験方法と国民生活センターの試験方法とで異なることが数字の違いの要因であると主張しています。
国センは、糖質の低減率を広告・表示する場合には、「消費者が適切な商品選択を行えるよう、そのように炊飯できる条件等の詳細を分かりやすく記載し、炊飯条件により実現可能な平均的な糖質の低減率を表示する」よう要望していますが、各社の改善内容は、炊飯するお米の種類や炊飯条件で糖質低減率の数値は異なる旨の打消し表示を記載するにとどまっています。

なお、上記4銘柄のうち、2銘柄(AINX(No.1)、ウィナーズ(No.3))については、景品表示法上問題となるおそれがあると指摘されましたが、10月31日の措置命令対象とはなっていません。
処分の線引きはどこにあったのか、以下の記事で分析してみます。
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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。