色やにおいがおかしい?増える「えごま油」に関する消費者相談

「アレルギー疾患を改善する」、「がんの発生を抑制する」、「高血圧を予防する」などの健康機能がメディアで取り上げられたα-リノレン酸を豊富に含む油として、「えごま油」が人気です。

同時に、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)には、えごま油に関する相談件数が、2015年度に入って急激に増加しています。

今年度に入り複数の消費生活センターからの、購入したえごま油の色やにおいがおかしいため、えごま油であるか調べてほしいという依頼を受け、国民生活センターが商品テストを実施し、その結果を公表しています。

通販でも購入されることの多い「えごま油」について、お客様への情報提供のポイントを確認しましょう。



PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)相談状況:

2010年度以降5年間あまり(2015年11月末までの登録分)でえごま油に関する相談が179件寄せられており、その8割以上は2015年度になってから寄せられたもの。(図1参照)
そのうち、「本当にえごま油なのか?」等、「品質・機能、役務品質」に関するものが83件、原産地の表示に疑問がある等「表示・広告」に関するものが75件あり(いずれも重複あり)、品質や産地等について関心が高い。
販売購入形態は、通信販売が105件(59%)、次いで店舗購入が60件(34%)(図2参照)。

【相談事例】
・外国製のえごま油が、色が濃く、においも味も普通のゴマ油のようだった。
・通販で購入した輸入品のえごま油が、以前利用していた国産品よりも黄色が濃く、別の油が混ざっているのではないかと思い、返品を希望している。
・知人から買ったえごま油は商品のどこにも原産国が書いていないが、外国産だろうか。
・購入したえごま油に産地の表示がなかった。販売元に聞くと、中国産のえごまを輸入して日本で加工していると言っていた。このような表示の仕方でいいのか。
えごま油_PIO-NET

テスト対象銘柄:
2015年 9月から10月に、Googleや楽天市場、Amazon.co.jp、Yahoo!ショッピングのサイトにおいて「えごま油」で検索した際に上位にあったものを調査し、東京都及び神奈川県内のスーパーマーケット、ディスカウントスーパー等の量販店での販売状況も照らし合わせて、20銘柄を選択。
また、供給量や使用実態から一般家庭でよく使用されていると考えられた食用植物油脂3種(なたね油、ごま油、オリーブ油)を参考品とした。

テスト結果:
1)脂肪酸組成
・20銘柄中1銘柄で脂肪酸組成が一般的なえごま油とは大きく異なるものあり。
2)酸化安定性
・えごま油は酸化安定性が低く、他の食用植物油脂(なたね油、ごま油、オリーブ油)よりも早く劣化した。
3)物性等
・えごま油にはほぼ無色のものから黄色や褐色のものがあり、色からは脂肪酸組成の違いは分からなかった。た(写真1参照)。
・酸価の値にはばらつきがあり製法の違い等が一因と考えられた。
・えごま油のよう素価は、他の食用植物油脂よりも高い。
※よう素価は、油脂に含まれる二重結合の数に比例し、油脂中の二重結合が多いものは酸素と結合しやすく、劣化が起こりやすい。
えごま油_外観
4)表示・広告
・インターネット通信販売サイトの広告に疾病の予防や健康の維持、増進効果と考えられる記載がみられた。健康増進法、若しくは景品表示法上問題となる可能性あり。(表 9、10 参照)。
・本体表示から商品の名称や原材料名等の記載内容が確認できないものが1銘柄あった。
・栄養成分表示の方法に問題のあるものがありました。(写真2参照)
えごま油_広告表示
えごま油_成分表示

以上の商品テスト結果より、えごま油を販売されている事業者の方は、次の点に留意してお客様への情報提供を今一度チェックされるとよいでしょう。

●効果等との関連性が明らかとは言い難い疾病の予防や健康の維持、増進効果の広告表示に注意する。
●義務表示事項や栄養成分表示等で食品表示法に則った適切な食品表示を確認する。
●脂質全体の摂り過ぎにもつながるため、過剰摂取に注意し、バランスのよい食事を心がけるよう注意喚起する。
●えごま油は劣化が早いため、低温で光の当たらないところで保管するなど、開封後の保管条件に気を付け、早めに使い切るように注意喚起する。

えごま油には品質に関する公的な規格はないことから、一定以上の品質のものが販売されるよう品質管理の徹底は勿論のこと、適切な情報提供を行うことでお客様に安心して購入利用していただきたいですね。

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見た目だけでは分からない、えごま油の品質
(国民生活センター 2016年1月28日)
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20160128_1.pdf
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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。