急増するSNSの消費者トラブルと行動ターゲティング広告特性 (国民生活センター 平成26年4月 )

SNSの普及とともに、SNSに関連した消費者トラブル相談が、2009年度以降増加傾向が続いていると、国民生活センターが注意喚起しています。
2012年度の件数は2009年度の1.94倍(2009年度:2,518件、2012年度:4,878件)となっており、また2013年度においても、2012年度の同期よりも多く相談が寄せられています。 (図1)
2013年度について一番多く寄せられている相談は、出会い系サイトに関するものが1,202件あり、(SNS上での友人申請、その後出会い系サイトへ誘導)さらに、健康食品に関する相談も目立ち、SNSに表示された広告をきっかけに購入してトラブルになるケースが寄せられています。(n=4,571)。

通販に関係したトラブル事例を紹介します。

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SNSの思わぬ落とし穴にご注意!
‐消費者トラブルのきっかけは、SNSの広告や知人から?‐
(国民生活センター 平成26年4月24日 )
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20140424_1.pdf
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SNS相談件数
※2回クリックすると拡大します。

≪相談事例≫
【事例1】SNSの広告を見て「お試しサプリメント」を注文したが、定期購入になっていた

SNSサイトの広告をクリックしたところ、1回300円でダイエット用サプリメントのお試しができると書いてあり、サプリメント2種類をクレジットカード決済で注文。
その後、受注メールもなく外国から注文品が届き、さらにその数日後、また荷物が届いた。クレジットカードの利用明細を見て、注文したサプリメントの代金600円以外に12,000円と6,000円の請求があがっていた。定期購入になっていたらしい。
SNSサイトで調べても、そのサプリメントを購入した際のホームページを見つけられない。商品の発送伝票には外国の住所らしき記載はあるが、電話番号の記載がなく、連絡ができない。

【事例2】ネットでしわ取りクリームのサンプルを申込んだが、定期購入になっていた
SNSの広告で「しわ取りクリームのサンプルが400円で買える」とあるのを見てクレジットカード決済で注文。外国から封筒に入ったクリームが2個届いた。
最近クレジットカードの明細書に、サンプルの注文日だけでなく、別の日の利用として約20,000円の請求もあがっていた。定期購入になっていたようだ。
広告や注文時の画面を残しておらず、販売している事業者のホームページも検索できない。

いずれも、SNS広告経由の通販サイトでお試し購入のつもりが、定期購入契約となっていたケースとなっています。

SNS広告経由の消費者トラブルが発生する要因として、国センでは以下のように分析しています。

・SNSに登録した情報等と連動した“ターゲティング広告”であること
SNSに登録した消費者自身の個人情報等が反映されており、消費者は通常の広告よりもSNSに表示される広告の文言を印象深く覚えていることもあると思われる。
SNSが利用者の個人情報等をどのように取り扱っているのか、消費者には十分伝わっていないことも考えられる。

《消費者へのアドバイス》
「大手SNSに表示される広告だから、リンク先も安心できる通販サイトだろう」といった思い込みをせず、広告の表示だけでなく、広告からリンクした先の通販サイトの表示や利用規約もよく確認すること。
SNSに登録・掲載する個人情報などが、どのように広告等へ利用されるのか、その範囲について、利用規約やプライバシー・ポリシー等で確認すること。そのうえで、広告の表示等について制限をかけられる場合は、その活用についても検討すること。

・広告掲載が短期間である
SNSの広告は短期間だけ表示される場合があり、トラブル発生後に消費者が再度広告を確認しようとしても、広告の表示が終わっていたり、広告から購入までの経過を再現することが難しかったりするため、トラブルの救済、拡大防止の取り組みが困難となる。

《消費者へのアドバイス》
・表示されている画面を保存、印刷しておくことは、トラブル解決に役立つことがある。

——

SNS及び行動ターゲティング広告は、広告媒体として高い広告効果が注目されており、広告市場も拡大しています。(※調査データ参照)
行動ターゲティング広告市場規模2012

(※)
・ニューロテクノロジー等を活用したインターネット広告に関する 自主調査
(2012年10月16日 株式会社サイバー・コミュニケーションズ)
SNS系サイトは高い記憶への影響度と興味喚起度をもって接触されており、高い広告効果が期待できる。

・Yahoo! JAPAN の公開情報によると、デモグラフィック(性別・年齢別情報を加味した)行動ターゲティングは、ノンターゲティングの 4.5 倍、行動ターゲティングの 1.9 倍の CTR(クリックスルーレート)が得られたという。エリア行動ターゲティングにおいても通常のエリアターゲティングに比べて 3~4 倍程度のCTR を記録したとしている。
(出典:CNET Japan  2007/06/26)

・マイクロアド、行動ターゲティング広告の市場規模を発表 2010年の行動ターゲティング広告市場は225億円、2015年には900億円突破と予測
(株式会社マイクロアド 2011年08月15日)

SNS事業者が広告収入をビジネスモデルとしているのであれば、メディアとしての広告審査体制の強化や、個人情報の取り扱いと広告表示について消費者に分かりやすく伝える努力など、自主的な取り組みが求められるのではないでしょうか。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。