令和6年を振り返ると、何かとコンプライアンス問題が取りざたされた年だと感じる方も多いのではないでしょうか。
コンプライアンス問題は、法令違反による行政処分だけでなく、企業の信用やブランド価値低下による多大なる事業への損失を伴います。
このような時代だからこそ、消費者に支持される企業でなければ生き残ることは困難な時代といえるでしょう。
そこで注目されるのが「消費者志向経営」です。
「消費者志向経営」とは、以下のように定義されています。
- 事業者が、現在の顧客だけでなく、消費者全体の視点に立ち、消費者の権利の確保及び利益の向上を図ることを経営の中心と位置付けること。
- その上で、健全な市場の担い手として、消費者の安全や取引の公正性の確保、消費者に必要な情報の提供、消費者の知識、経験等への配慮、苦情処理体制の整備等を通じ、消費者の信頼を獲得すること。
- さらに、中長期的な視点に立ち、持続可能で望ましい社会の構築に向けて、自らの社会的責任を自覚して事業活動を行うこと。
※消費者と直接取引をする事業者に限らない。
(消費者庁「消費者志向経営の取組促進に関する検討会」報告書
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11740732/www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/consumer_oriented_management/review_meeting/pdf/160406_houkokusho.pdf)
このようなテーマは必ずしも短期的に営業成果が見えるといった類のものではありません。
そのため、事業者が消費者志向経営に自主的取り組むためには、その取組が、事業者としての社会的責任を果たしていると消費者や多様な関係者から評価され、購入、求人、資金調達等につながることが期待されることとなります。
それでは、消費者は企業の「消費者志向経営」への取り組みを、どのように認識しているのでしょうか。
消費者庁では昨年11月に、全国の15歳以上の男女5,000人を対象に、「消費者志向経営」に対する消費者の意識や行動をテーマとした消費生活意識調査(※1)を行っています。
その結果では、5割以上の人が消費者志向経営に興味を持ったと答え、6割の人が「消費者志向経営」に取り組んでいる企業の商品等の購入意向を示しています。
今回は、「令和6年度第4回消費生活意識調査」より、「消費者志向経営」に対する消費者の関心度や取組企業への購入、就職、投資等の意識について取り上げました。
《調査結果概要》
- 「消費者志向経営」に興味を持った人は5割強
- 企業の「消費者志向経営」の取組に対する認知度は15%に留まる
- 「消費者志向経営」に取り組んでいる企業の商品等の購入意向は6割、割高でも購入したいと思う人は5割弱
- 就職・求職活動で、企業の「消費者志向経営」の取組状況を判断材料にしたい人は45%
- 取引相手や投資先選定で、企業の「消費者志向経営」の取組状況を判断材料にしたい人は5割
「消費者志向経営」に興味を持った人は5割強
消費者志向経営の内容(※2)を説明し、考えるきっかけをつくることを意図して、「企業の取組事例」や「消費者志向経営の概念」を提示。
その上で、どの程度、消費者志向経営に興味を持ったか聞いたところ、「興味を持った」と回答した人(「興味を持った(10.8%)」又は「ある程度興味を持った(40.6%)」と回答した人)の割合は51.4%だった。
年代別では、70歳代以上が最も高く67.9%、次いで60歳代52.5%、10歳代52.3%。
男女別では、男性45.4%、女性57.0%。
(※2)
「消費者志向経営」とは、企業が消費者の声を聴き、かつ、いかして、消費者がわくわくするような商品・サービス等を提供することを通じて、地域や社会の課題解決に貢献する経営。
企業の「消費者志向経営」の取組に対する認知度は15%に留まる
企業が消費者志向経営に該当する取組を行っていることについて、「知っていた」と回答した人の割合は15.4%。
年代別では、70歳代以上が最も高く19.6%、次いで60歳代16.2%、10歳代15.6%。
男女別では、男性17.7%、女性13.3%。
「消費者志向経営」に取り組んでいる企業の商品等の購入意向は6割、割高でも購入したいと思う人は5割弱
消費者志向経営に取り組んでいる企業の商品等を購入したいかについて、「購入したい」と回答した人(「購入したい(10.5%)」又は「ある程度購入したい(50.0%)」と回答した人)の割合は60.5%。
年代別では、70歳代以上が最も高く77.7%、次いで60歳代62.4%、10歳代59.2%。
男女別では、男性56.2%、女性64.6%。
さらに、消費者志向経営に取り組んでいる企業の商品等を選ぶ場合、他の商品等よりどの程度なら割高であっても購入したいかについて、「割高でも購入したい」と回答した人(「割高(30%程度以上)に関係なく購入したい(8.7%)」、「ある程度割高(10%以上30%程度未満)でも購入したい(8.6%)又は「少し割高(10%程度未満)でも購入したい(30.1%)」と回答した人)の割合は47.4%。
年代別では、70歳代以上が最も高く54.6%、次いで10歳代52.3%、20歳代51.3%。
男女別では、男性46.6%、女性48.2%。
就職・求職活動で、企業の「消費者志向経営」の取組状況を判断材料にしたい人は45%
就職活動や求職活動を行う際、企業における消費者志向経営の取組状況を確認し、判断材料にしたいかについて、「判断材料にしたい」と回答した人(「判断材料にしたい(7.7%)」又は「ある程度判断材料にしたい(37.3%)」と回答した人)の割合は45.0%。
年代別では、70歳代以上が最も高く54.3%、次いで10歳代48.1%、60歳代45.7%。
男女別では、男性42.6%、女性47.2%。
取引相手や投資先選定で、企業の「消費者志向経営」の取組状況を判断材料にしたい人は5割
取引相手や投資先を選定する際、企業における消費者志向経営の取組状況を確認し、判断材料にしたいかについて、「判断材料にしたい」と回答した人(「判断材料にしたい(8.4%)」又は「ある程度判断材料にしたい(41.9%)」と回答した人)の割合は50.2%。
年代別では、70歳代以上が最も高く65.4%、次いで60歳代51.1%、10歳代49.6%。
男女別では、男性46.5%、女性53.6%。
本調査結果から、消費者は企業の消費者志向経営の取組みについて知ることができれば消費者は支持してくれることが読み取れます。
特に、70歳代、10歳代の関心度が高く、割高でも購入意向のある価格許容度に関しては、20歳代30歳代においても5割となっています。
一方、企業における「消費者志向経営」の取組の認知度については、約15%にとどまっており、認知度の低さがネックとなっていると考えられます。
企業として自らの消費者志向経営の取り組みを消費者に伝え、理解を深める消費者とのコミュニケーションが一層重要となってくるでしょう。
国も事業者の消費者志向経営の自主的取り組みを後押ししています。
消費者庁では、優良事例表彰を通じた企業の優れた取組の周知、消費者庁ウェブサイトにおける自主宣言実施企業の掲載等、「消費者志向経営」の周知活動に取り組んでいます。
消費者志向経営推進組織の活動
(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/consumer_oriented_management/propulsion_organization
※1
「令和6年度第4回消費生活意識調査」の結果について
https://www.caa.go.jp/notice/entry/040399
調 査 項 目
(1)「消費者志向経営」に係る関心度
(2)「消費者志向経営」の取組の認知度
(3)「消費者志向経営」に取り組んでいる企業の商品等の購入意向
(4)「消費者志向経営」に取り組んでいる企業の商品等に対する価格許容度
(5)「消費者志向経営」に取り組んでいる企業への就職・求職に係る希望
(6)「消費者志向経営」に取り組んでいる企業への取引・投資に係る希望
調査方法 インターネットを利用したアンケート調査
サンプル数等
5,000サンプル(人口構成比に応じた割付)
性年代
7段階の男女(15~19 歳、20~29 歳、30~39 歳、40~49 歳、50~59 歳、60~69 歳、70 歳以上)
地域区分は、次の単位とする。
北海道・東北:北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
関東:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県
甲信越:新潟県、山梨県、長野県
北陸:富山県、石川県、福井県
東海:岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
近畿:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
中国:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
四国:徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州・沖縄:福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
調査実施期間 令和6年11月7日~11月10日
≪関連記事≫
・「消費者志向経営」の事業者にとっての効果(メリット)とは?
(平成26年4月 「消費者志向経営の取組促進に関する検討会」報告書)
・平成30年度消費者志向経営優良事例表彰発表!高めたい消費者志向経営の消費者への認知(消費者庁 2018年11月28日)
・消費者志向経営を推進において重要だと考える取組は、「消費者の声の社内共有と事業活用」が5割(平成30年度 消費者意識基本調査)
・2017年の消費者行政「企業の適正なビジネスを応援する」
(岡村消費者庁長官記者会見 2017年1月11日)
・「消費者志向経営」が社会の基本認識に。SDGs、ESG投資との関係をより明確化(消費者庁 2020年9月)
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