トクホ広告117件の広告中11件に違反の恐れあり。トクホと機能性表示の棲み分け検討も (日健栄協 第9回 特定保健用食品広告審査会)

1991 年(平成 3 年)に発足した特定保健用食品制度。
2019年3月現在で1068品目が許可・承認され、市場規模は6432億円(2018年度)となっています。

・2018年度トクホ市場規模6432億円、前年度比微減。販売経路別では通販129.7%増の376億円

公益財団法人 日本健康・栄養食品協会では、2013年度より〈トクホ〉の広告表現の適正化と向上を図ることを目的として「特定保健用食品広告審査会」を過去8回開催しています。
今回、平成 31 年 1 月に実施された第9回審査会の審査結果概要を紹介します。

広告審査は、企業が出稿した広告について、健康増進法等の関連法規、消費者庁「特定保健用食品に関する質疑応答集」 (※1)および「『特定保健用食品』適正広告自主基準」(※2)等への適合性の観点から審査されています。
審査した117件の広告中11件で、法令や同協会の適正広告自主基準などへの適合性に疑問があると判定しました。
また、同協会では4月に消費者庁に対して、トクホと機能性表示食品のすみ分けについて、トクホの健康強調表示の見直しを要望しています。


【審査結果】
TV、新聞、雑誌の広告117件について審査を行った。
(ネットの広告については特定保健用食品広告部会で意見交換会を開催し、ネット広告の特性に応じた留意点の普及啓発活動が進められている。)

TV:68件中「A」判定(1件)、「B」判定(1件)、「C」判定(2件)
新聞:34件中「B」判定(2件)、「C」判定(3件)
雑誌:15件中「A」判定(1件)、「B」判定(1件)
(第8回:「A」判定 0件、「B」判定 9 件、「C」判定 4 件)

「A」判定:
健康増進法に抵触する恐れや、消費者庁の「特定保健用食品に関する質疑応答集」および虚偽、特定保健用食品の許可範囲を超える表現など「「特定保健用食品」適正広告自主基準」に著しく抵触するもので、2件。
広告表現が許可表示の範囲を超えており、疾病の治療や予防ができるかのような誤認を与える広告、個人の感想等の広告表現が許可表示を超える過大な効果を期待させたり、その過大な効果についても国が許可・保証しているかのような誤認を与える広告が自主基準に著しく抵触していると判定された。

「B」判定:
「特定保健用食品に関する質疑応答集」および「「特定保健用食品」適正広告自主基準」に抵触するもので、4件。
当該製品を摂取するだけで健康が維持増進できるような表現が消費者に誤認を与えるおそれがある広告や、広告に表示が必要な3項目(特定保健用食品である旨、食生活のバランス文言、許可表示文言)の記載がない広告が自主基準に抵触していると判定された。

「C」判定:
「特定保健用食品に関する質疑応答集」および「「特定保健用食品」適正広告自主基準」に抵触するおそれのあるもの、および消費者に誤認を与えるおそれのあるもので、5件。

2015年4月にスタートし5年目を迎えた機能性表示食品は、5月17日現在の届出件数は2039件となっており、特定保健用食品の許可件数1068件を大きく上回っています。
機能性表示食品制度スタート時より懸念されていたトクホと機能性表示食品との棲み分けについて、具体的な検討も始まっています。

日本健康・栄養食品協会が4月に消費者庁に対して提出したトクホ制度に関する要望書では、トクホと機能性表示食品のすみ分けについて、トクホの健康強調表示の見直しを要望。
トクホ・機能性表示食品・健康食品の区別がつかない消費者も多くみられる中、現状、機能性表示食品の方がトクホよりも強いと受け取られる健康強調表示の表現が可能であり、トクホより機能性表示食品が優位であると誤認させる可能性もあると指摘しています。

例)
機能性表示食品:
《現状》
最終製品のヒト試験に基づき「血圧が高めの方の血圧を改善し、正常な血圧を維持します」
関与成分の研究レビューに基づき「血圧が高めの方の血圧を改善する機能があることが報告されています」

特定保健用食品:
《現状》
最終製品のヒト試験に基づき「血圧が高めの方に適した食品です」、「血圧が気になる方に適した食品です」
《要望》
「本品を摂取することで、血圧が高めの方の血圧を下げることがヒト試験において確認されており、血圧が高めの方に適した食品であることを表示することが国によって許可されています。」

さらに、「許可表示」を「期待できる効果」、「関与成分」を「有効成分」に変更するなど、消費者に馴染みのない用語を変更し、審査結果に基づいたわかりやすい表現で、より具体的な表示を可能とするように求めています。

—————
「特定保健用食品の有効活用と制度の発展について(要望)」提出
(2019年4月5日 公益財団法人 日本健康・栄養食品協会)
http://www.jhnfa.org/news-0225.html
—————

消費者が各制度を正しく理解し、適切な製品選択できるよう、業界事業者だけでなく、広告業界とも連携し、健康食品の広告・表示が消費者にとってわかりやすいものとなるよう、一層の取り組みが求められています。

(※1)
「特定保健用食品に関する質疑応答集」(消費者庁 平成23年6月)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_190329_0004.pdf

(※2)
「『特定保健用食品』適正広告自主基準」((財)日本健康・栄養食品協会)
http://www.jhnfa.org/topic80a.pdf

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第9回 特定保健用食品広告審査会 審査結果 (2019年3月22日 公益財団法人 日本健康・栄養食品協会)
http://www.jhnfa.org/koukoku9.pdf

日時:2019年1月17日(木) 13時00分~17時00分
審査対象:
広告収集期間 2018年4月1日~2018年9月30日
収集件数:117件(内訳)テレビ68 件、新聞34件、雑誌 15件
(第8回:119件 (内訳)テレビ57件、新聞45件、雑誌17件)
審査要領:
外部専門家(第三者委員)4名と協会会員企業のメンバーで構成された広告部会の代表(企業委員)3 名で構成し、企業が出稿した広告について、関連法規および「『特定保健用食品』適正広告自主基準」への適合性を確認した。
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≪関連記事≫

・強まる健康食品への規制 トクホ広告審査と業界の自主規制の取り組み
(日健栄協 第4回 特定保健用食品広告審査会)

・トクホ広告23%に違反の恐れあり。今後はWeb広告も審査対象に
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(日健栄協 第2回 特定保健用食品広告審査会)

・トクホ広告適正基準、個人の感想等や映像媒体でのグラフ使用の注意事項とは
(日健栄協)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。