平成29年の食品表示法違反「指示件数」国は11件、都道府県は10件(食品表示法:H29年度、警察庁:H29年)

先日の記事では、平成29年度下期の食品表示法指導状況をお伝えしました。
今回は、食品表示法違反「指示」や、食の安全に関する警察の処分といった悪質な事件の発生状況について取り上げます。


指導:
「食品表示法に基づく指示及び指導並びに公表の指針」に照らし、食品表示基準違反が常習性がなく過失による一時的なものであり、違反事業者が直ちに表示の是正を行い、事実と異なる表示があった旨を速やかに情報提供している場合に行う行政指導
指示:
「食品表示法に基づく指示及び指導並びに公表の指針」に照らし、指導に該当しない場合に行う行政指導(食品表示法第6条第1項及び第3項)
命令:
食品表示法第6条第1項又は第3項の指示に係る措置を、正当な理由なく履行しない事業者に対する行政処分(食品表示法第6条第5項)、「食品表示法に基づく命令等の指針」に照らし、食品の回収等又は営業停止を命ずる行政処分(食品表示法第6条第8項)

食品表示法第4条第1項の規定に基づいて定められた食品表示基準の違反に係る同法第6条第1項及び第3項の指示及び指導並びに公表の指針
(消費者庁 国税庁 農林水産省 平成27年3月20日)
http://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/tuti/attach/pdf/t0000924-1.pdf

●食品表示法の食品表示基準に関する指示件数、国は11件、都道府県は10件


平成29年度の指示の対象となった品目の内訳では、生鮮食品について国が4件、都道府県は6件。加工食品については国が7件、都道府県は4件となっています。

また、「指示」に従わない場合の改善措置の命令は、国は0件、都道府県による加工食品の2件となっています。

食品表示法の食品表示基準に係る指示及び命令件数(※1)


注: 一つの指示の中で複数の品目区分の食品が対象となったケースがあり、品目区分数の合計は指示件数と一致しない。

●食の安全に関する事犯の検挙事件数は、平成21年以降減少傾向

食の安全に関する事犯について、悪質なものや国民の生命・身体に影響を与えかねないものなどについては、警察により摘発され処罰を受けます。
警察庁の発表(※2)によると、食の安全に係る事犯(食品衛生関係事犯及び食品の産地等偽装表示事犯)の検挙事件数は26件で、前年の32件から6件減少しました。

平成20年以降の食の安全に係る事犯の検挙状況の推移

具体的な検挙事例(食品の産地等偽装表示事犯)は以下のとおりです。
・食料品販売等会社従業員らによるごぼうの原産地偽装に係る不正競争防止法違反事件
食料品販売等会社の従業員(41)らは、不正の目的をもって、平成 28 年7月頃、外国産ごぼうについて、産地表なる書面に青森県十和田市産であるかのように誤認させるような表示をして、同年8月、保育園に対し同書面を交付した上、外国産ごぼうを納品した。
29年5月に、2法人2人を不正競争防止法違反(誤認惹起行為)で検挙した(警視庁)。

・水産物輸入販売等会社役員らによるうなぎの原産地偽装に係る不正競争防止法違反等事件
水産物輸入販売等会社の会社役員(47)らは、不正の目的をもって、平成29年1月、 同社が経営する飲食店で提供するうなぎ料理には、中国産うなぎを使用していたにもかかわらず、「三河産うなぎ」、「静岡産うなぎ」と記載したのぼりを同店出入口付近に設置した上、「私が大切に育てた鰻です」などと記載したうなぎの養殖業者の顔写真を店内壁面に掲示するなどし、国産うなぎであるかのように誤認させるような表示をするなどした。
29年7月までに、1法人2人を不正競争防止法違反(誤認惹起行為)等で検挙した(愛知)。

・農産物加工販売会社役員らによるねぎの原産地偽装に係る不正競争防止法違反事件
農産物加工販売会社の会社役員(61)らは、不正の目的をもって、平成28年12月頃、 京都府産以外のねぎを原材料として混在させたカットねぎを「原材料名九条葱(京都府産)」等と印刷したシールを貼付した容器に詰め、京都府産九条ねぎのみを使用加工して製造した商品であるかのように誤認させるような表示をして、仕入業者に対し販売した。 29年10月に、1法人3人を不正競争防止法違反(誤認惹起行為)で検挙した(京都)。

原料産地の不当表示では、食品表示法、不正競争防止法による処分だけでなく、景品表示法での処分の可能性もあります。
・石垣島の農組に景表法措置命令。スパイスの原料産地表示に優良誤認

(※1)
食品表示法の食品表示基準に係る指示及び命令件数について(平成29年度)
(平成30年6月 消費者庁 国税庁 農林水産省)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_180622_0002.pdf

(※2)
平成29年中における食の安全に係る事犯の検挙状況について
(平成30年4月 警察庁生活安全局 「平成29年中における生活経済事犯の検挙状況等について」より)
http://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/seikeikan/H29nennpou.pdf

≪参考記事≫
・食品表示法の食品表示基準に係る国による指導状況
(平成27年度上半期 消費者庁・国税庁・農林水産省)
・食品の表示違反動向
食品表示法:H27年度、警察庁:H27年
(JAS法:平成26年度、警察庁:平成26年)
(JAS法:平成25年度、警察庁:平成25年)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。