令和4年度の国や都道府県の景表法の運用状況及び違反概況です。
《記事内容》
・調査件数・処理件数の推移
・事件内容の内訳
・処理事件の商品役務別分類
・措置命令を行った事件
・課徴金納付命令
・行政処分取消訴訟
・都道府県の措置内容
令和4年度の国と都道府県の措置命令件数の合計は48件で、前年度の45件から3件増加しました。
内訳をみると、国の措置命令件数が42件で前年度(41件)から1件増加、都道府県が行った法的措置(措置命令)は6件で前年度(4件)から2件増加となっています。
国の措置命令件数、都道府県の法的措置件数の推移

*
国の措置命令件数について:
平成21年8月末日までは公正取引委員会における排除命令件数、同年9月以降は消費者庁における措置命令件数。
都道府県知事による法的措置件数について:
平成26年11月末日までは指示件数、同年12月1日以降は措置命令件数である(ただし、平成26年度の措置命令件数は0件。)。
《国(消費者庁及び公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等)》の処理状況
令和4年度の景品表示法違反に関する国の調査件数は減少傾向。一般の消費者や事業者からの情報提供総数は増加傾向。
令和4年度の景品表示法違反に関する国の調査件数は274件。前年度374件で5年連続減少している。
内訳は、前年度からの繰越しが85件。(前年度169件)、新規に着手した調査件数は189件。(前年度205件)。
新規調査内訳:
職権探知件数は48件。(前年度65件)
一般の消費者や事業者からの情報提供による調査件数は137件(前年度138件)で横ばいだが、情報提供件数総数は14,410件で、前年度12,503件、前々年度11,650件から増加している。このうち食品表示に関係する内容(外食等、役務に分類されるものは含まない。)が含まれる情報数は548件。(前年度506件)
処理件数は、措置命令が41件で前年度(41件)から横ばい、指導件数も112件で前年度(172件)から60件減少した。
国の調査件数等の推移

措置命令42件中、優良誤認が32件。不実証広告規制の割合が7割
令和4年度の措置命令は表示事件のみで42件(前年度41件)。
表示事件:
優良誤認の38件(前年度30件)。
内、不実証広告規制が29件(前年度21件)と76%を占める。
指導は104件(前年度112件)。
有利誤認については3件(前年度8件)。
指導は26件(前年度43件)。
その他の措置命令は「おとり広告」1件(前年度0件)。(前年度は「原産国表示」2件)
指導は「原産国表示」が2件(前年度6件)。「おとり広告」4件(前年度0件)
景品事件:
措置命令0件、指導のみ9件。前年度14件から5件減少。
表示事件の内訳

*関係法条が2以上に渡る事件があるため、本表の合計は「調査件数等の推移」の合計と一致しない。

景品事件の内訳

措置命令の多かった商品役務は、「食品」。「保健衛生品」大幅に減少
商品役務別の措置命令処分件数では、
「保健衛生品」が1件と、前年度12件、前々年度22件から大幅に減少した。
「食品」が10件(前年度8件)、「住居品」9件(前年度6件)、「教養娯楽品」6件(前年度10件)、「被服品」4件(前年度0件)、「教養・娯楽サービス」3件(前年度0件)、「車両・乗り物」2件(前年度5件)、「教育サービス」2件(前年度1件)、「その他」4件。
それ以外は0件となった。
処理事件の商品役務別分類

令和4年度の措置命令を行った事件
措置命令事件は次のとおり、全て表示事件であり、その件数は計41件である。
- 健康食品の痩身効果に関する不当表示 1件
- 空間除菌用品の効果に関する不当表示 1件
- 就職支援サービスの実績に関する不当表示 2件
- 健康食品の栄養成分の含有量に関する不当表示 1件
- 消火用具の消火性能に関する不当表示 5件
- 健康食品の糖尿病等の疾病を改善する効果に関する不当表示 1件
- 衣料品の痩身効果又は筋肉増強効果に関する不当表示 4件
- 回転寿司のキャンペーン対象料理の提供に関する不当表示 1件
- バストアップ及びボディ痩身に係る役務のNo.1表示に関する不当表示 1件
- 食品の「通常価格」と称する価額に関する不当表示 1件
- 果実ミックスジュースの果汁の含有割合に関する不当表示 1件
- 健康食品の新型コロナウイルスの感染予防効果に関する不当表示 1件
- 健康食品等のがんや難治性の疾患を改善する効果や新型コロナウイルスの感染予防効果に関する不当表示 4件
- プラスチック製品の生分解性能に関する不当表示 10件
- オンライン個別学習指導に係るNo.1表示及び期限限定表示に関する不当表示 1件
- 四輪車等の燃費向上効果等を標ぼうする商品に関する不当表示 2件
- コンサートの座席レイアウトに関する不当表示 3件
- 学習塾の個別指導の料金に関する不当表示 1件
※太字は不実証広告規制(第7条第2項)適用事案:29件
課徴金納付命令13名の事業者に対して4億8484万円
令和4年度は、15名の事業者に対して、延べ17件の課徴金納付命令を行い、3億441万円の課徴金納付を命じた。
(令和3年度は、13名の事業者に対して、延べ15件の課徴金納付命令を行い、4億8484万円の課徴金納付を命じた。)
課徴金額では、インスタグラムを違反対象とした初の景品表示法措置命令となった、アシスト(株)と(株)アクガレージに対する件が突出していた。
アシスト(株):1億1716万円(R5.1.24)、(株)アクガレージ:1944 万円(R5.3.30)
《関連記事》
・アフィリエイトに加えてインスタ投稿が違反対象表示に。アクガレージとアシストの豊胸サプリに景表法措置命令(消費者庁 2021年11月9日)
なお、実施予定返金措置計画はなし。
(過去の認定された返金措置は消費者庁Webサイトに掲載)
◆認定された返金措置一覧(消費者庁HP)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/authorization_list/
課徴金納付命令及び実施予定返金措置計画の件数の推移

規模基準(課徴金額が150万円未満となる場合には、課徴金を賦課しない)等により、消費者庁が措置命令を行った案件のうち、過去3年度の間に課徴金を賦課しないこととされた案件の合計は63件。
※景品表示法の課徴金制度は、「不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律」が平成26年11月19日に成立し、平成28年4月1日から施行され、運用が始まった。
行政処分取消訴訟
●大正製薬株式会社に対して景品表示法の規定に基づく措置命令(令和元年7月4日)
令和4年9月30日、同社が同命令の取消しを求めて提訴した。(訴訟係属中)
同社は、同日に、同命令の執行停止の申立てを行った。同申立てについては、同年11月11日、申立人(大正製薬株式会社)の申立てを却下する決定がなされたところ、同月17日に申立人が、同決定における敗訴部分の取消しを求めて即時抗告を行った。
同年12月22日、東京高等裁判所において、申立人の抗告を棄却する決定がなされた(決定確定)。
・光触媒マスク4社に景表法措置命令。問題となる機能性の検証と表示の整合性:前編(消費者庁:2019年7月4日)
・光触媒マスク4社に景表法措置命令。問題となる機能性の検証と表示の整合性:後編(消費者庁:2019年7月4日)
●株式会社東亜産業に対する景品表示法に基づく措置命令(令和2年8月28日)
令和4年7月29日、同社が同命令の取消しを求めて提訴した。(訴訟係属中)
・通販事業者 東亜産業、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。新型コロナウイルス関連商品に注意(消費者庁 2020年8月28日)
●株式会社だいにち堂に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令(令和3年2月3日)
令和4年12月26日、同社が同命令の取消しを求めて提訴した。
令和2年3月4日、東京地方裁判所において原告の請求を棄却する判決がなされ、同月16日、原告が同判決の取消しを求めて控訴を提起した。(訴訟係属中)
・「いわゆる健康食品」の暗示的広告表現に対する消費者庁の判断。「アスタキサンチン アイ&アイ」に景表法措置命令(消費者庁:平成29年3月9日)
●ティーライフ株式会社に対して景品表示法の規定に基づく措置命令(令和3年3月23日)
令和3年4月12日、同社が同命令の取消しを求めて提訴すると同時に、同命令の執行停止の申立てを行った。
令和4年4月28日、東京地方裁判所において原告の請求を棄却する判決がなされた(判決確定)。
・痩身系健康茶「メタボメ茶」、ティーライフ(株)に対し2度目の景表法措置命令。体験談は「ダイエットプーアール茶」?(消費者庁:2021年3月23日)
●レック株式会社に対して景品表示法の規定に基づく措置命令(令和3年4月9日)
令和3年4月30日、同社が同命令の取消しを求めて提訴し、同年6月4日、同社が同命令の執行停止の申立てを行った。
同申立てについては、同年8月18日、申立人(レック株式会社)の申立てを却下する決定がなされた(決定確定)。
同訴えの提起については、令和5年2月2日、東京地方裁判所において原告の請求を棄却する判決がなされた(判決確定)。
・空間除菌用品の除菌効果表示に対する景表法措置命令 マクセルとレックにみる合理的根拠の争点と取消訴訟判断
●株式会社ユニクエストに対して景品表示法の規定に基づく課徴金納付命令(令和3年7月2日)
令和3年12月24日、同社が同命令の取消しを求めて提訴した(訴訟係属中)。
・ユニクエスト、葬儀サービスの「追加料金不要」表示に景表法措置命令。Web 広告の打消し表示に注意(消費者庁:平成30年12月21日)
●大幸薬品株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令(令和3年12月14日)
大幸薬品が同命令の仮の差止めの申立てを行った。
令和4年1月12日、東京地方裁判所において、大幸薬品の申立てを一部却下する決定がなされたところ、同月13日に大幸薬品が、同月20日に国(消費者庁)が、同決定におけるそれぞれの敗訴部分の取消しを求めてそれぞれ即時抗告を行った。
同年4月13日、東京高等裁判所において、東京地方裁判所の決定のうち国(消費者庁)の敗訴部分を取り消し、申立人(大幸薬品)の抗告を棄却する決定がなされた(決定確定)。同月25日、申立人が上記の差止めの訴えを取り下げた。
・クレベリン「置き型」にも景表法措置命令。空間除菌効果表示の合理的根拠、消費者庁に軍配(消費者庁 2022年4月15日)
●セブンエー美容株式会社ら3社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令(令和4年3月3日)
令和4年8月9日、3社が同命令の取消しを求めて提訴したが、令和5年1月20日、3社が当該訴えを取り下げた。
・美容脱毛サービスの金額表示に有利誤認。セブンエー美容、ダイシン、エイチフォーに景表法措置命令(消費者庁 2022年3月3日)
《都道府県知事》の処理状況
都道府県の措置命令は6件。東京都、埼玉県、静岡県、大阪府、兵庫県
都道府県では5都道府県(東京都、埼玉県、静岡県、大阪府、兵庫県)において6件の措置命令が行われている。
都道府県による措置命令件数の推移は、平成27年度においては3件、平成28年度は1件、平成29年度は8件、平成30年度は9件、令和元年度は15件、令和2年度は8件、令和3年度は4件。
(平成26年11月末日までは指示。同年12月以降、各都道府県知事に対して、新たに景品表示法の規定に基づく措置命令権限と不実証広告規制に係る合理的根拠提出要求権限が付与された。)
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東京都:
・健康食品の痩身効果に関する不当表示 1件
・医薬部外品のシワ改善効果に関する不当表示 1件
埼玉県:
・整骨院施術サービスのNo.1表示、痩身、小顔効果に関する不当表示 1件
静岡県:
・塩蔵わかめの原産国に関する不当表示 1件
大阪府
・新聞社の告示制限の範囲を超える過大な景品類の提供 1件
兵庫県
・焼き肉店のメニュー表示に関する不当表示 1件
※太字は不実証広告規制(第7条第2項)適用事案:3件
参考記事:
・都道府県等への措置命令権限付与から7年。景表法執行に向けた運用課題と今後の取り組み
同じく令和4年度版報告書より、令和3年度の消費者庁の表示適正化への具体的な取組について、以下の記事にまとめています。
(※)
令和4年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_230922_02.pdf
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