前回の記事では、消費者庁の「景品表示法の運用状況及び消費者取引の適正化への取組」(※1)より、令和2年度の景表法違反状況を取り上げました。
今回は、令和2年度の消費者庁の表示適正化への具体的な取組について報告します。
自社のコンプライアンス対策に、チェックしてみてください。
●健康食品に対する景品表示法と健康増進法との一体的な執行
●新型コロナウイルスへの予防効果等を標ぼうする不当表示等への対応
●「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針」の策定・公表
●携帯電話端末の広告表示に関する最近の動向
●事業者が講ずべき管理上の措置の執行 「指導及び助言」が109件
●公正競争規約の新設(特定保健用食品)と変更(アイスクリーム類及び氷菓、もろみ酢、はちみつ類)
●都道府県との連携、協力関係強化
●健康食品に対する景品表示法と健康増進法との一体的な執行
虚偽・誇大広告等に対しては、景品表示法及び健康増進法に基づく法執行が消費者庁の表示対策課食品表示対策室において行われた。
・平成28年6月30日に全面改訂を行った「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の周知に引き続き注力。
・令和2年度に、インターネット上で特定保健用食品及び機能性表示食品の虚偽・誇大広告の監視を行い、健康増進法第65条第1項(誇大広告の禁止)の規定に違反するおそれのある事業者に対しては、表示の改善を要請した。
・令和2年度は、景品表示法措置命令2件(前年度3件)のほか、健康増進法第65条第1項項(誇大表示の禁止)に違反するおそれがある事案について17件(前年度27件)の指導を行った。
●健康⾷品に関する景品表⽰法及び健康増進法上の留意事項について(要約版)
(パンフレット:消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_9.pdf
●健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について
(全部改定 平成 28 年6月 30 日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_8.pdf
●新型コロナウイルスへの予防効果等を標ぼうする不当表示等への対応
・インターネット広告において、景品表示法及び健康増進法の観点から緊急監視を行い、新型コロナウイルスへの予防効果を標ぼうする健康食品、空間除菌商品、マイナスイオン発生器、アロマオイル、光触媒スプレー等について改善要請を実施するとともに、消費者に対する注意喚起を行った。
また、消毒、除菌等に対する消費者の関心が高まる中、アルコール商品、次亜塩素酸水、空間除菌用品、健康食品等の表示について措置命令を行い、令和2年度における措置命令 33 件のうち 21 件が消毒、除菌等の効果等についてのものであった。
このうち、携帯型空間除菌用品、抗体検査キット及び研究用抗原検査キットの販売を行っていた事業者に対して再発防止等の行政指導を行ったことを公表し、消費者に対して注意喚起を促した。
・2度目の緊急事態宣言下、消費者庁の新型コロナウイルス予防商品緊急監視(第4弾)、45事業者42 商品・役務の表示に改善要請 (消費者庁 2021年1月~2月上旬)
・新型コロナ抗原検査キット、抗体検査キットの販売事業者5社に景表法行政指導。消費者庁の監視続く(消費者庁 2021年3月26日)
●「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針」の策定・公表
将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行う際には、表示された将来の販売価格が十分な根拠のあるものでないとき(実際に販売することのない価格であるときや、ごく短期間のみ当該価格で販売するに過ぎないときなど)に、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがある。
令和2年12月25日、「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執
行方針」を公表した。
本執行方針は、将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示について、過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示との相違に関する基本的な考え方を示し、消費者庁が景品表示法を適用する際の考慮事項等を明らかにするものであり、価格表示ガイドラインを補完する位置付けとなっている。
◆不当な価格表示についての景品表示法上の考え方
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_35.pdf
◆将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針(案)に関する意見募集の結果の公示及び同執行方針の成案の公表について(2020年12月25日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/022622/
●携帯電話端末の広告表示に関する最近の動向
消費者庁では、平成30年度以降、継続的に表示の実態やそれに対する消費者の認識等を確認するとともに、携帯電話端末の広告表示に関する注意喚起等の取組を行っている。
◆携帯電話業界における「頭金」の表示や端末販売価格に関する注意喚起
~携帯電話端末の購入を検討している方へ~
(令和2年11月10日)
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms201_201109_01.pdf
◆携帯電話の表示に関する総点検
携帯電話に関する消費者庁の取組(令和3年6月29日)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000757748.pdf
●事業者が講ずべき管理上の措置の執行 「指導及び助言」が109件
不当表示等の発生を防止するために、事業者が講ずべき必要な体制の整備その他の必要な措置について、消費者庁は必要な指導及び助言、勧告をすることができる(景品表示法第27条、第28条第1項)。
勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。(第28条第2項)
令和2年度は「指導及び助言」が109件となった。(前年度96件)

指導が行われた事例:
① 原産国表示について自社ウェブサイトにおいて実際と異なる表示をしていたところ、当該表示の根拠となる情報を確認していなかった
② 優良誤認表示について景品表示法の考え方の周知啓発・法令遵守の方針等の明確化・表示等を管理するための担当者等を定めず、自社ウェブサイトにおいて当該商品の効果について、表示の根拠となる情報を確認していなかった
③ 優良誤認表示について不当な表示等が明らかになった場合に迅速かつ適切な対応を行っておらず、アフィリエイトサイトにおいて当該商品の効果について、表示の根拠となる情報を確認していなかった
④ 総付景品について景品表示法の考え方の周知啓発・法令遵守の方針等の明確化・景品類の提供等を管理するための担当者等を定めること・不当な景品類の提供等が明らかになった場合に迅速かつ適切な対応を行っておらず、違法とならない景品類の価額の最高額・総額・種類・提供の方法等を確認していなかった
●公正競争規約の新設(特定保健用食品)と変更(アイスクリーム類及び氷菓、もろみ酢、はちみつ類)
新設:
特定保健用食品(表示)
国民の健康の維持増進に寄与することを目的とした特定保健用食品の広告表示について、消費者が正しく商品選択できる環境を整備するための表示の適正化を図るために規約及び施行規則の新設を行った。(令和2年6月9日認定、承認)
特定保健用食品の表示に関する公正競争規約及び同施行規則(施行日:令和2年8月21日)
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/tokuho.pdf
変更:
アイスクリーム類及び氷菓(表示)
食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の一部を改正し、全ての加工食品に原料原産地表示を義務付ける内閣府令(平成29年内閣府令第43号。以下「原料原産地府令」という。)が施行されたことに伴う一部変更を行った。(令和2年6月23日認定、承認)
アイスクリーム類及び氷菓の表示に関する公正競争規約
(施行日:令和2年6月23日)
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/icecream.pdf
もろみ酢(表示)
1.食品表示基準の一部改正に伴い、従来の各種基準を引用する規約について、食品表示基準の条文等に対応させるために所要の変更を行った。
2.原料原産地府令が施行されたことに伴う一部変更を行った。
(令和2年9月8日認定、承認)
もろみ酢の表示に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:令和2年9月30日)
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/moromisu.pdf
はちみつ類(表示)
1.マヌカの花を蜜源とするはちみつの名称について、ニュージーランド政府の表示規制導入に伴い所要の変更を行った。
2.原料原産地府令が施行されたことに伴う一部変更を行った。
(令和2年9月8日認定、承認)
はちみつ類の表示に関する公正競争規約及び施行規則(施行日:令和2年9月30日告示)
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/honey.pdf
●都道府県との連携、協力関係強化
・都道府県における景品表示法の執行力の強化に向けて、公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等と協力して北海道・東北地区、関東甲信越地区、中部地区、近畿地区、中国地区、四国地区、九州・沖縄地区のブロックの都道府県との連絡会議を開催し、景品表示法担当職員向けに研修を実施。
(令和2年度においてはコロナ禍を踏まえ、第1回目は書面開催、第2回目はブロックを4つに分けてオンラインで開催)
・都道府県職員対象の執行研修や、都道府県が行う景品表示法の運用に関して助言を行う。
・消費者庁は、平成24年4月1日から景品表示法に関する調査情報等を共有するネットワーク(景品表示法執行NETシステム)の運用を開始し(※2)、公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等及び都道府県等との情報共有の緊密化、協力関係強化を図っている。
令和2年度の消費者庁の表示適正化への取り組みで特筆すべきは、なんといっても「新型コロナウイルスへの予防効果等を標ぼうする不当表示等への対応」といえるでしょう。コロナ禍が収束するまでは収まりそうにありません。
また、「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示」にも注意が必要です。新たな規制というわけではなく、これまでの景表法の価格表示ガイドラインを補完する位置付けとして執行方針がまとめられています。二重価格表示を行う際はよく確認しておきましょう。
「不当表示等の発生防止のための事業者が講ずべき管理上の措置」については、「指導及び助言」件数が年々増加しており、今回の報告書では初めて指導が行われた事例が公表されています。
課徴金納付命令の処分回避の条件という観点からも「不当表示の防止等を図るための管理監督」は十分に行なうことが重要です。
事業者の皆さんには、一層の管理体制への取り組みが求められます。
広告法務のリスクマネジメントについて、お気軽にご相談ください。
(※1)
令和2年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_210721_01.pdf
(※2)
消費者庁『景品表示法執行NETシステム』運用開始!景品表示法執行が迅速化?
http://blog.fides-cd.co.jp/article/265751202.html
《関連記事》
・景表法改正、事業者が講ずべき広告表示の適正管理の指針案(消費者庁 平成24年8月8日)
・景表法改正、広告表示の適正管理のための7つのポイン+1
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