消費者庁が年度ごとの景表法違反に関する事件処理件数や、国や自治体の取り組みをまとめた「景品表示法の運用状況及び消費者取引の適正化への取組」(※)。
6月26日に公表された令和元年度の景表法違反状況を報告します。
●国の措置命令件数、都道府県の法的措置件数の合計は、ほぼ横ばい
国の措置命令件数と都道府県の法的措置件数の合計は55件で、前年度の55件と変わらず。
内訳をみると、国の措置命令件数が40件で前年度(46件)から6件減少、都道府県が行った法的措置(措置命令)は15件で前年度(9件)から6件増加となった。

*
国の措置命令件数について:
平成21年8月末日までは公正取引委員会における排除命令件数、同年9月以降は消費者庁における措置命令件数。
都道府県知事による法的措置件数について:
平成26年11月末日までは指示件数、同年12月1日以降は措置命令件数である(ただし、平成26年度の措置命令件数は0件。)。
《国(消費者庁及び公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等)》
● 調査件数、処理件数ともに減少
令和元年度の景品表示法違反に関する国の調査件数は492件(前年度591件)。
新規に着手した280件(前年度364件)のうち、職権探知件数は44件(前年度45件)で、ほぼ横ばい。一般の消費者や事業者からの情報提供による調査件数は225件(前年度309件)で減少しているが、情報提供件数総数は10,645件で前年度9,146件から増加している。このうち食品表示に関係する内容(外食等、役務に分類されるものは含まない。)が含まれる情報数は369件。
処理件数は、措置命令が40件で前年度(46件)から6件減少、指導件数も205件で前年度(216件)から11件減少した。都道府県移送は29件で前年度(76件)から大幅に減少している。

●優良誤認が42件中32件、不実証広告規制の割合が76%
令和元年度の措置命令は表示事件のみで42件(前年度56件)。最も多かったのは優良誤認の32件(前年度41件)。内、不実証広告規制が25件(前年度31件)と78%を占める。有利誤認については9件(前年度14件)となった。その他「原産国表示」が1件となった。
指導については196件と、前年度203件から7件の減少となった。内訳では、優良誤認が99件(前年度114件)、有利誤認は84件(前年度76件)。原産国表示が10件(前年度10件)、おとり広告が3件(前年度2件)。
(平成24年度から、「警告」、「注意」の区分を廃止し、「指導」にまとめられた。)
景品事件は、指導のみで18件。前年度23件から5件減少した。

*関係法条が2以上に渡る事件があるため、本表の合計は「調査件数等の推移」の合計と一致しない。

●措置命令の多かった商品役務は「食品」「保健衛生品」
商品役務別の措置命令処分件数を見ると、「食品」が11件(前年度19件)で引き続き最多、次いで「保健衛生品」9件(前年度3件)、「教養娯楽品」7件(前年度0件)、「被服品」3件(前年度11件)、「教養・娯楽サービス」3件(前年度0件)、「金融・保険サービス」2件(前年度0件)、「運輸・通信サービス」1件(前年度2件)だった。

●課徴金納付命令17名の事業者に対して4億6559万円
令和元年度は、17名の事業者に対して、延べ17件の課徴金納付命令を行い、4億6559万円の課徴金納付を命じた。
(平成30年度は、13名の事業者に対して、延べ20件の課徴金納付命令を行い、5億801万円の課徴金納付を命じた。)
なお、認定された実施予定返金措置計画はなし。(過去の認定された返金措置は消費者庁Webサイトに掲載)
◆認定された返金措置一覧(消費者庁HP)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/authorization_list/
※景品表示法の課徴金制度は、「不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律」が平成26年11月19日に成立し、平成28年4月1日から施行され、運用が始まった。
●令和元年度の措置命令を行った事件
措置命令事件は次のとおり、全て表示事件であり、その件数は計40件である。
・ペットのトリミングサービス及びホテルサービスに関する不当表示 1件
・自社の店舗で供給する料理に関する不当表示 1件
・害虫駆除剤の効果に関する不当表示 1件
・食品の白髪を黒髪にする効果に関する不当表示 1件
・化粧品及び雑貨の原産国に関する不当表示 1件
・葬儀サービスの費用に関する不当表示 1件
・加熱式たばこに係る販売価格の割引期間等に関する不当表示 1件
・食品の肥満効果に関する不当表示 1件
・移動体通信役務に係る商品に関する不当表示 1件
・花粉用マスクの効果に関する不当表示 4件
・パンの販売価格に関する不当表示 1件
・百貨店提携クレジットカードに関する不当表示 1件
・クリーニングサービスの提供価格に関する不当表示 1件
・下着の痩身効果に関する不当表示 2件
・整体サービスに係る提供価格の割引期間等に関する不当表示 1件
・自社の店舗で供給する唐揚げに関する不当表示 1件
・食品の免疫力を高める効果に関する不当表示 1件
・ダイエットパッチの痩身効果に関する不当表示 3件
・抱っこひもの身体にかかる負担に関する不当表示 1件
・収納スペースの賃貸サービスに係る提供価格の割引期限に関する不当表示 1件
・食品の筋肉増強効果及び痩身効果に関する不当表示 1件
・食品の妊娠効果に関する不当表示 1件
・食品の白髪を黒髪にする効果に関する不当表示 1件
・食品の痩身効果に関する不当表示 1件
・クレジットカード等のキャッシュバックキャンペーンに関する不当表示 1件
・食パンに係る原材料に関する不当表示 2件
・EMS機器の痩身効果に関する不当表示 7件
●打消し表示に対する評価を行った事件
景品表示法の執行においては、「打消し表示」に関する報告書(※)で明らかにした考え方に基づく事実認定を行っている。
(※)
「打消し表示に関する実態調査報告書」(平成29年7月公表)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180921_0001.pdf
「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」(平成30年5月公表)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180516_0002.pdf
「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」(平成 30 年6月公表)」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180607_0002.pdf
令和元年度に消費者庁が措置命令及び指導を行った事件のうち、打消し表示の効果についての考え方で、参考となる認定例は次のとおり。
・株式会社ECホールディングスに対する措置命令(令和元年6月5日)
・ふるさと和漢堂株式会社に対する措置命令(令和元年6月28日)
・LINEモバイル株式会社に対する措置命令(令和元年7月2日)
・株式会社エムアイカードに対する措置命令(令和元年7月8日)
・イマジン・グローバル・ケア株式会社に対する措置命令(令和元年11月1日)
・株式会社シンビジャパンに対する措置命令(令和元年11月29日)
・株式会社エムアンドエムに対する措置命令 (令和2年3月6日)
・株式会社あすなろわかさに対する措置命令 (令和2年3月17日)
・株式会社TOLUTOに対する措置命令 (令和2年3月19日)
●行政処分取消訴訟
アマゾンジャパン合同会社に対する景品表示法の規定に基づく措置命令(平成29年12月27日)を行ったことに対し、平成30年1月26日、同社らが同命令の取消し及び同命令の執行停止を求めて提訴した(訴訟係属中)。
・アマゾンに不当な二重価格表示で景表法措置命令!表示責任のポイントは?(消費者庁:平成29年12月27日)
株式会社だいにち堂に対する景品表示法に基づく措置命令(平成29年3月9日) を行ったことに対し、平成30年8月24日、同社が同命令の取消しを求めて提訴した(訴訟係属中)。
・「いわゆる健康食品」の広告表示に対する消費者庁の判断。「アスタキサンチン アイ&アイ」に景表法措置命令
株式会社ライフサポートに対して景品表示法の規定に基づく措置命令(平成31年3月6日)を行ったことに対し、令和元年6月3日、同社が同命令の取消しを求めて提訴した(訴訟係属中)。
・「快適生活」のライフサポート おせち料理の二重価格表示に景表法措置命令
《都道府県知事》
●都道府県の措置命令は15件。最多は大阪府の6件
都道府県では、6都道府県において15件の措置命令が行われている。最多は大阪府の6件。次いで埼玉県の6件。
都道府県による措置命令件数の推移は、平成27年度においては3件、平成28年度は1件、平成29年度は8件、平成30年度は9件。
(平成26年11月末日までは指示。同年12月以降、各都道府県知事に対して、新たに景品表示法の規定に基づく措置命令権限と不実証広告規制に係る合理的根拠提出要求権限が付与された。)
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次回は同じく令和元年度版報告書より、令和元年度の消費者庁の表示適正化への具体的な取組について報告します。
(※)
令和元年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_200626_02.pdf
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