30年度景表法違反、国及び都道府県の措置命令件数は55件。優良誤認が大幅増加(消費者庁 2019年6月)

消費者庁が年度ごとの景表法違反に関する事件処理件数や、国や自治体の取り組みをまとめた「景品表示法の運用状況及び消費者取引の適正化への取組」(※)。
6月25日に公表された平成30年度の景表法違反状況を報告します。

●国の措置命令件数、都道府県の法的措置件数の合計は、ほぼ横ばい

国の措置命令件数と都道府県の法的措置件数の合計は55件で、前年度の58件から3件減少。
内訳をみると、国の措置命令件数が46件で前年度(50件)から4件減少、都道府県が行った法的措置(措置命令)は9件で前年度(8件)から1件増加となった。

国の措置命令件数、都道府県の法的措置件数の推移


国の措置命令件数について:
平成21年8月末日までは公正取引委員会における排除命令件数、同年9月以降は消費者庁における措置命令件数。
都道府県知事による法的措置件数について:
平成26年11月末日までは指示件数、同年12月1日以降は措置命令件数である(ただし、平成26年度の措置命令件数は0件。)。


《国(消費者庁及び公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等)》
● 調査件数、職権探知が減少し28年度並みに

30年度の景品表示法違反に関する国の調査件数は591件。
新規に着手した364件(前年度425件)のうち、職権探知件数は45件(前年度93件)で、28年度並みに戻った。一般の消費者や事業者からの情報提供による調査件数は309件(前年度323件)。情報提供件数総数は9,146件で前年度11,053件から減少した。このうち食品表示に関係する内容(外食等、役務に分類されるものは含まない。)が含まれる情報数は655件。
処理件数は、措置命令が46件で前年度(50件)から4件減少したが、指導件数は216件で前年度(179件)から37件増加し、28年度に続き増加している。都道府県移送は76件で前年度(130件)から大幅に減少し、28年度並みに戻った。

国の調査件数等の推移

●優良誤認が大幅増加、不実証広告規制の割合が76%

30年度の措置命令は表示事件のみで、最も多かったのは優良誤認の41件(前年度27件)。内、不実証広告規制が31件(前年度23件)と76%を占める。有利誤認については14件(前年度20件)となった。その他「有料老人ホーム」が1件となった。
指導については203件と、前年度168件から35件の増加となった。内訳では、優良誤認が114件(前年度95件)、有利誤認は76件(前年度65件)で共に増加。原産国表示が10件(前年度6件)、おとり広告が2件(前年度2件)、有料老人ホームが1件(前年度0件)で原産国表示の増加が顕著。
(平成24年度から、「警告」、「注意」の区分を廃止し、「指導」にまとめられた。)

景品事件は、指導のみで23件。前年度14件から9件増加した。

表示事件の内訳

*関係法条が2以上に渡る事件があるため、本表の合計は「調査件数等の推移」の合計と一致しない。

景品事件の内訳

●措置命令の多かった商品役務は「食品」「被服品」

商品役務別の措置命令処分件数を見ると、「食品」が19件(前年度19件)で引き続き最多、次いで「被服品」11件(前年度2件)、「保健衛生品」3件(前年度0件)、「住居品」2件(前年度4件)、「運輸・通信サービス」2件(前年度6件)だった。

処理事件の商品役務別分類

●課徴金納付命令13名の事業者に対して5億801万円

平成30年度は、13名の事業者に対して、延べ20件の課徴金納付命令を行い、5億801万円の課徴金納付を命じた。
(平成29年度は、17名の事業者に対して、延べ19件の課徴金納付命令を行い、3億9153万円の課徴金納付を命じた。)
なお、認定された実施予定返金措置計画はなし。(過去の認定された返金措置は消費者庁Webサイトに掲載)

◆認定された返金措置一覧(消費者庁HP)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/authorization_list/

※景品表示法の課徴金制度は、「不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律」が平成26年11月19日に成立し、平成28年4月1日から施行され、運用が始まった。

●平成30年度の措置命令を行った事件

措置命令事件は次のとおり、全て表示事件であり、その件数は計46件である。

・ソファカバーに係る撥水加工に関する不当表示 1件
・香辛料に係る原材料に関する不当表示 1件
・自社の店舗で供給する料理に関する不当表示 3件
・動画配信サービス及び光回線インターネット接続サービスに関する不当表示 2件
・自社の店舗で供給する料理に関する不当表示 1件
・食品等の痩身効果等に関する不当表示及び販売価格に関する不当な二重価格表示 5件
・有料老人ホームにおいて提供するサービスに関する不当表示 1件
・自社の店舗で供給する料理に関する不当表示 1件
・食品の肥満効果に関する不当表示 1件
・食品の豊胸効果に関する不当表示 1件
・食品の痩身効果に関する不当表示 1件
・エアコン及びテレビの販売価格に関する不当な二重価格表示 1件
・飲料の視力の回復効果及び目の症状の改善効果に関する不当表示 1件
・食品の痩身効果に関する不当表示及び新規定期購入契約に係る人数制限に関する不当表示 1件
・自社の店舗で供給する料理に関する不当表示 2件
・葬儀サービスの費用に関する不当表示 1件
・食品の痩身効果に関する不当表示 1件
・おせち料理の販売価格に関する不当な二重価格表示 1件
・衣類の痩身効果及び筋肉増強効果に関する不当表示 9件
・食品等の痩身効果等に関する不当表示及び販売価格に関する不当な二重価格表示  5件
・食品の白髪を黒髪にする効果に関する不当表示 1件
・食品の痩身効果に関する不当表示 5件

●行政処分取消訴訟

アマゾンジャパン合同会社に対する景品表示法の規定に基づく措置命令(平成29年12月27日)を行ったことに対し、平成30年1月26日、同社らが同命令の取消し及び同命令の執行停止を求めて提訴した(訴訟係属中)。
・アマゾンに不当な二重価格表示で景表法措置命令!表示責任のポイントは?(消費者庁:平成29年12月27日)

株式会社だいにち堂に対する景品表示法に基づく措置命令(平成29年3月9日) を行ったことに対し、平成30年8月24日、同社が同命令の取消しを求めて提訴した(訴訟係属中)。
・「いわゆる健康食品」の広告表示に対する消費者庁の判断。「アスタキサンチン アイ&アイ」に景表法措置命令

三菱自動車工業株式会社及び日産自動車株式会社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令(平成29年6月14日)を行ったことに対し、平成29年9月13日、同社が同命令の取消しを求めて審査請求を提起した。
消費者庁は、平成30年12月21日、行政不服審査会の答申の判断を尊重し、裁決により、同命令を取り消した。
・日産の課徴金取り消しに見るOEM供給における相当注意義務
http://blog.fides-cd.co.jp/article/463538432.html

《都道府県知事》
●都道府県の措置命令は東京、静岡、大阪において9件

都道府県では、3都道府県において9件の措置命令が行われている。最多は大阪府の6件。平成27年度においては3件、平成28年度は1件、平成29年度は8件。
(平成26年11月末日までは指示。同年12月以降、各都道府県知事に対して、新たに景品表示法の規定に基づく措置命令権限と不実証広告規制に係る合理的根拠提出要求権限が付与された。)

次回は同じく30年度版報告書より、30年度の消費者庁の表示適正化への具体的な取組について報告します。

(※)
平成30年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/information_other/2019/pdf/information_other_2019_190625_0003.pdf

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。