引き続き打消し表示は要注意!30年度の消費者庁の広告表示適正化への取組 (消費者庁 平成30年6月)

前回の記事では、消費者庁の「景品表示法の運用状況及び消費者取引の適正化への取組」(※1)より、30年度の景表法違反状況を取り上げました。
今回は、30年度の消費者庁の表示適正化への具体的な取組について報告します。
自社のコンプライアンス対策に、チェックしてみてください。

●「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」及び「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」の公表
●「携帯電話等の移動系通信の端末の販売に関する店頭広告表示についての景品表示法上の考え方等」の公表
●事業者が講ずべき管理上の措置の執行 「指導及び助言」が90件
●公正競争規約の変更(食酢、コーヒー、家電)
●インターネット上の広告表示の監視調査は継続中
●都道府県との連携、協力関係強化
●健康食品に対する景品表示法と健康増進法との一体的な執行


●「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」及び「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」の公表
消費者庁表示対策課は、平成29年7月公表の「打消し表示に関する実態調査報告書」に続いて、平成30年5月に「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」を公表。
消費者意識調査(Webアンケート調査及びグループインタビュー調査)の結果に基づき、打消し表示に関する景品表示法上の考え方や事業者に求められる表示方法等を明らかにしたもの。

◆スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180516_0002.pdf

上記調査を踏まえ、平成30年6月に「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」を公表。
アイトラッキング機器を用いた、一般消費者が動画広告、紙面広告及びスマートフォンのWebページ閲覧の実態調査とともに、表示の内容を認識していたか否かについてインタビュー調査を行い、各種媒体ごとに打消し表示に関する景品表示法上の考え方や求められる表示方法等を整理した。

◆広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180607_0002.pdf

景品表示法の執行においても、この報告書で明らかにした考え方に基づく事実認定を行っている。
30年度に消費者庁が措置命令及び指導を行った事件のうち、打消し表示の効果についての考え方で、参考となる認定例は次のとおり。

・ソフトバンク株式会社に対する措置命令(平成29年7月27日)

・株式会社TSUTAYAに対する措置命令(平成30年5月30日)

・株式会社Life Leafに対する措置命令(平成30年7月25日)

・株式会社GLORIAに対する措置命令(平成30年7月30日)

・株式会社言歩木に対する措置命令(平成30年10月25日)

・株式会社シエルに対する措置命令(平成30年10月31日)

・株式会社ユニクエストに対する措置命令(平成30年12月21日)

・株式会社はぴねすくらぶに対する措置命令 (平成31年1月17日)

・株式会社Growasに対する措置命令 (平成31年3月28日)

・株式会社アルトルイズムに対する措置命令 (平成31年3月29日)

・酵素等の成分の作用による痩身効果を標ぼうする食品の販売事業者5社に対する措置命令 (平成31年3月29日)

●「携帯電話等の移動系通信の端末の販売に関する店頭広告表示についての景品表示法上の考え方等」の公表
携帯電話等の販売においては、想定外のオプション契約が必要であった、スマートフォンの回線契約のほかに光回線契約を締結させられたといった相談がみられる。
一般消費者の想定外の契約締結の防止に資することから、携帯電話等の店頭における広告表示について、景品表示法上の考え方等を整理し、平成30年11月13日に公表した。

◆携帯電話等の移動系通信の端末の販売に関する店頭広告表示についての景品表示法上の考え方等の公表について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_181113_0001.pdf

●事業者が講ずべき管理上の措置の執行 「指導及び助言」が90件
不当表示等の発生を防止するために、事業者が講ずべき必要な体制の整備その他の必要な措置について、消費者庁は必要な指導及び助言、勧告をすることができる(景品表示法第27条、第28条第1項)。
勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。(第28条第2項)
30年度は「指導及び助言」が90件となった。

●公正競争規約の変更(食酢、コーヒー、家電)
平成30年度に消費者庁長官及び公正取引委員会の認定した規約変更18件のうち、内容に実質的な変更があったものは次のとおり。

食酢(表示)
食品表示法(平成25年法律第70号)に基づく食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)及び不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律(平成26年法律第118号)の施行に伴う一部変更を行った。(平成30年5月7日認定、承認)

食酢の表示に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:平成30年5月18日)
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/026.pdf

レギュラーコーヒー・インスタントコーヒー(表示)
レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの定義の一部変更等を行うとともに、食品表示法に基づく食品表示基準の施行に伴う一部変更等を行った。(平成30年5月11日認定、承認)

レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約
(施行日:平成30年5月21日)
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/012.pdf

家電(景品)
表現ぶりを整え、既存の規定を明確にするための一部変更を行った。(平成30年7月18日
認定、承認)

家庭電気製品業における景品類の提供に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:平成30年7月31日告示)
https://www.eftc.or.jp/code/freegift/index.php

●インターネット上の広告表示の監視調査は継続中
・消費者庁では、一般消費者に「電子商取引表示調査員」として、インターネット上の広告表示の調査を委託している。
・電子商取引表示調査員からの報告は、景品表示法違反事件の端緒の発見、景品表示法違反行為の未然防止の観点から行う事業者への啓発活動に活用している。
・30年度は、684件(前年度916件)が報告され、そのうち、景品表示法違反の問題があると認められたサイトは、143サイト(前年188サイト)136事業者(前年172事業者)。景品表示法の未然防止の観点から注意が行われた。

●都道府県との連携、協力関係強化
・都道府県における景品表示法の執行力の強化に向けて、公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等と協力して北海道・東北地区、関東甲信越地区、中部地区、近畿地区、中国地区、四国地区、九州・沖縄地区のブロックごとに年2回都道府県との連絡会議を開催し、景品表示法担当職員向けに研修を実施。
・都道府県職員対象の執行研修や、都道府県が行う景品表示法の運用に関して助言を行う。
・消費者庁は、平成24年4月1日から景品表示法に関する調査情報等を共有するネットワーク(景品表示法執行NETシステム)の運用を開始し(※2)、公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等及び都道府県等との情報共有の緊密化、協力関係強化を図っている。

●健康食品に対する景品表示法と健康増進法との一体的な執行
虚偽・誇大広告等に対しては、景品表示法及び健康増進法に基づく法執行が消費者庁の表示対策課食品表示対策室において行われた。
・平成28年6月30日に全面改訂を行った「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の周知に引き続き注力。
・インターネット上で特定保健用食品及び機能性表示食品の虚偽・誇大広告の監視を行い、健康増進法第31条第1項(誇大広告の禁止)の規定に違反するおそれのある事業者に対しては、表示の改善を要請した。
・平成30年度においては、景品表示法措置命令17件(前年度1件)のほか、健康増進法第31条第1項に違反するおそれがある事案について35件(前年度34件)の指導を行った。

●健康⾷品に関する景品表⽰法及び健康増進法上の留意事項について(要約版)
(パンフレット:消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_9.pdf

●健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について
(全部改定 平成 28 年6月 30 日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_8.pdf

消費者庁の表示適正化への取り組みで特に注目すべきは、平成29年度に引き続き、「打消し表示」に関する取り組みで、、都道府県や広告媒体事業者、事業者団体等に積極的に研修を行い周知に努めています。
措置命令事案において打消し表示に対する評価を行った事案については、打消し表示の効果についての考え方をよく確認しておきましょう。

また、課徴金制度を始めとした法執行や、健康食品に対する景品表示法と健康増進法との一体的な執行強化の流れはさらに進むと考えられます。

事業者の皆さんには、一層の管理体制への取り組みが求められます。
広告法務のリスクマネジメントについて、お気軽にご相談ください。

(※1)
平成30年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/information_other/2019/pdf/information_other_2019_190625_0003.pdf

(※2)
消費者庁『景品表示法執行NETシステム』運用開始!景品表示法執行が迅速化?
http://blog.fides-cd.co.jp/article/265751202.html

《関連記事》
・消費者庁が本気で調査!打消し表示は明瞭に

・景表法改正、事業者が講ずべき広告表示の適正管理の指針案(消費者庁 平成24年8月8日)

・景表法改正、広告表示の適正管理のための7つのポイン+1

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。