2025年11月28日、消費者庁は、ドラッグストアチェーン「ツルハドラッグ」などを展開するツルハホールディングスのグループ会社である、株式会社ツルハグループマーチャンダイジングが運営する自社ECサイトに対し、景品表示法の措置命令を行いました。
「ツルハグループe-shop本店」の「特売セール」ページで販売していた商品に、販売実績のない「通常価格」での二重価格表示を行っていたことが有利誤認違反となりました。対象となったのは日用品・衛生用品・ペット用品・食料品・医薬品等79商品にわたります。
「通常価格」をめぐる措置命令は2024年度4件、2025年度は本件を含め4件と近年多発する中、ドラッグストアチェーン業界最大手の、通販事業を担うグループ会社に対する処分は社会的にインパクトがあります。
本記事では措置命令の概要と違反の背景を解説します。
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株式会社ツルハグループマーチャンダイジングに対する景品表示法に基づく措置命令について (消費者庁 2025年11月28日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/044261/
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違反内容
【対象事業者・業務内容】
株式会社ツルハグループマーチャンダイジング(東京都港区)
化粧品、洗剤、日用雑貨等の企画、製造、加工、卸売、小売、通信販売等の事業
【表示媒体】
自社ウェブサイト「ツルハグループe-shop本店」
【表示期間】
遅くとも令和7年2月26日から同年6月7日までの間 5商品
遅くとも令和7年2月26日から同年6月6日までの間 3商品
遅くとも令和7年5月9日から同年6月7日までの間 32商品
遅くとも令和7年5月9日から同年6月6日までの間 39商品
【対象商品】
「ツルハグループe-shop本店」と称するページで販売する日用品・衛生用品・ペット用品・食料品・医薬品等79商品
【表示内容】
自社ウェブサイトにおいて、特売セール各商品について、例えば「特別価格:498円(税込) 通常価格:612円(税込)」等と表示。
あたかも、「通常価格」と称する価額は、自社ウェブサイトにおいて、本件79商品について通常販売している価格であり、実際の販売価格が当該「通常価格」に比して安いかのように表示していた。
【実際】
「通常価格」は、自社ウェブサイトにおいて、本件79商品について最近相当期間にわたって提供された実績のないものであった。
【表示例】

「通常価格」に求められる「最近相当期間にわたって販売されていた実績」
「通常価格」を比較対照価格とした二重価格表示の違反において、多く見られる違反認定パターンが、「最近相当期間にわたって販売されていた実績」がなかった、というものです。
「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(比較対照価格ガイドライン)では、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」の目安として、以下の3要件をすべて満たすことが示されています。
1)二重価格表示を行う最近時(セールの各時点において、その時点からさかのぼる8週間が目安)において、「通常価格」で販売されていた期間が当該商品の販売期間の過半を占めていること(8週間未満の場合はその過半)
2)「通常価格」での販売期間が通算して2週間以上であること
3)「通常価格」で販売された最後の日からセール開始時までに2週間以上経過していないこと
(※)
◆不当な価格表示についての景品表示法上の考え方
(平成12年6月30日公正取引委員会 改定 平成28年4月1日消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_35.pdf
特に注意が必要なのは1)の要件です。セール開始時点では要件を満たしていても、セール期間が4週間を超えると「通常価格」での販売期間が8週間の過半を満たさなくなります。セール期間が4週間を超える場合は、セール開始時点でセール期間を明示するとともに、比較対照価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるかを表示しておくことが求められます。
なお、本事案では、上記3要件がすべて満たされていなかったことが、消費者庁の処分発表において報じられています。
違反の背景:EC価格管理のメンテナンス不備
同社は措置命令を受けた後、「「価格に関する不当な表示」についてのお詫び」において、違反の原因を「商品情報管理に付随したメンテナンス不備」と説明しています。
(株)ツルハグループマーチャンダイジング
「価格に関する不当な表示」についてのお詫び 2025年11月28日
https://shop.tsuruha.co.jp/information-detail
多数の商品を取り扱うECサイトでは、商品ごとに通常価格とセール価格をシステムで設定・管理されていると考えられます。しかし、各商品の価格変更履歴と販売実績の個別管理が煩雑になっていくことで、「通常価格」として設定した価格での実際の販売実績がないまま、長期間にわたって二重価格表示が継続するという「通常価格の形骸化」が起きやすくなります。
本事案は、「特売セール」での「通常価格」の根拠管理が追いついていなかったという、ECサイト運営事業者にとって身近なリスクを示すものです。
同様の構造的な管理不備による「通常価格」違反事案は過去にも発生しており、本事案と同様の課題を抱えるEC事業者は少なくないと考えられます。
《参考記事》
・販売実績のない「通常価格」表示に有利誤認。家具・インテリア雑貨EC運営の長谷川産業(株)に措置命令 (消費者庁:2025年2月28日)
「通常価格」をめぐる措置命令は、物販EC、実店舗小売、資格・教育等サービスなど業種・販売形態を問わず繰り返し発生しており、大手・有名企業も例外ではありません。
二重価格表示のルールを正しく理解し、商品情報管理体制をしっかりと見なおしましょう。
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