5月24日及び25日、消費者庁は、投てき消火用具の消火効果表示について、販売事業者5社に対し、景品表示法違反(優良誤認)の措置命令を行いました。
処分を受けたのは、(株)栄徳(愛知県西尾市)、(株)エビス総研(東京都中央区)、(株)ファイテック(愛知県大口町)、(株)ボネックス(埼玉県新座市)、(株)メディプラン(岡山市中区)の5社です。
優良誤認で不実証広告規制(※)を用いた処分となっており、消火剤から発生するガスの消火効果表示について、5社が提出した根拠資料は、いずれも表示の裏付けとなる「合理的な根拠」として認められず、また、エビス総研は「消防庁認定」など、商品の消火性能を消防庁が認定しているかのような事実と異なる表示をしていました。
異なる商品で5社一斉の処分は、「投てき消火用具」を扱う業界にとって大きく信用を損なう問題だと思います。
処分のポイントについて確認します。
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投てき消火用具の販売事業者5社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2022年5月25日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/028791/
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(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。
違反概要
(1)株式会社栄徳
商品:「First Shot」と称する商品
表示媒体、表示期間:
「Amazon.co.jp」における商品の販売ページ
少なくとも2020年8月27日~2022年4月15日までの間
表示内容:
あたかも、一般的な住宅の居室内で発生する、当該居室の天井に炎の高さが届かない程度の火災で、かつ、約8㎥の範囲に炎が広がるまでの火災の火元に商品1本を投げるだけで、商品の消火剤から発生するガスの立体的な消火効果も作用して、当該火災を消すことができる効果が得られるかのように示す表示をしていた。
違反表示例:First Shot(「Amazon.co.jp」における商品の販売ページ)
(2)エビス総研
商品:「小さな消防士」「小さな消防士2」と称する商品
表示媒体、表示期間:
「ERI」と称する自社ウェブサイト
遅くとも2021年7月8日~2022年4月25日までの間
「YouTube」における動画広告
2017年9月5日~2022年5月10日までの間
表示内容:
あたかも、一般的な住宅の居室内で発生する、4畳半から6畳程度の範囲に炎が広がるまでの火災に商品1本を投げるだけで、商品の消火剤から発生するガスの消火効果も作用して、当該火災を消すことができる効果が得られるかのように示す表示をしていた。
また、そのような消火性能が商品に備わっていることについて、消防庁が認定しているかのように示す表示をしていた。
違反表示例:「小さな消防士」「小さな消防士2」(自社ウェブサイト)
(3)株式会社ファイテック
商品1:「ファイテック投てき用消火用具」又は「投てき用消火用具Fitech」と称する商品
商品2:「火にポン」と称する商品
表示媒体、表示期間:
商品パッケージ
商品1:遅くとも2021年9月1日以降、少なくとも2020年7月1日~2021年6月30日までの間、少なくとも2018年7月1日~2020年4月30日までの間
商品2:遅くとも2021年7月1日以降
販売用広告
遅くとも2021年9月1日以降
表示内容:
あたかも、一般的な住宅の居室内で発生する、居室の天井に炎の高さが届くまでの火災の火元に商品1本を投げるだけで、火災を消すことができる効果等が得られるかのように示す表示をしている、またはしていた。
違反表示例:「ファイテック投てき用消火用具」 (販売用広告)
(4)(株)ボネックス
商品1:「投げ消すサット119ecoプラス」と称する商品
商品2:「火消ッシュ」と称する商品
商品3:「火消し119」と称する商品
商品4:「投てき消火剤」と称する商品
商品5:「投げ消すサット119eco」と称する商品
表示媒体、表示期間:
商品パッケージ
商品1:遅くとも2019年12月2日以降、同年11月1日以降
商品2、3,4:遅くとも2019年11月1日以降
商品5:遅くとも2020年4月2日以降
「BONEX」と称する自社ウェブサイトおよびサイト内動画広告
商品5:遅くとも2021年9月30日~2022年4月27日までの間、2017年2月1日~2022年4月27日までの間、2010年3月12日~2022年4月27日までの間
表示内容:
あたかも、一般的な住宅の居室内で発生する、居室の天井に炎の高さが届くまでの火災の火元に商品1本を投げるだけで、火災を消すことができる効果等が得られるかのように示す表示をしている、またはしていた。
違反表示例:「投げ消すサット119ecoプラス」 (商品パッケージ)
(5)(株)メディプラン
商品:「消える魔球」と称する商品
表示媒体、表示期間:
「Medi-plan」と称する自社ウェブサイト
遅くとも2021年7月8日以降
商品パッケージ
遅くとも2019年9月1日以降
「YouTube」における動画広告
2012年6月25日以降
表示内容:
あたかも、一般的な住宅の居室内で発生する、炎の高さが大人の身長程度までの火災の火元に商品1個を投げるだけで、火災を消すことができる効果等が得られるかのように示す表示をしている、またはしていた。
違反表示例:「消える魔球」 (商品パッケージ)
実際:
5社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
エビス総研については、消防庁が、商品に消火性能が備わっていることを認定した事実はない。
消火効果表示の裏付けとなる「合理的な根拠」として認められなかった根拠資料について、報道では、以下のように報じられています。
5社が提出したのは少量の油をまいて起こした火を消す映像などで、実際の火災を一つの商品で消火する効果の裏付けとは認められないと判断したという。
「投げて簡単消火」 消火用具の広告は「根拠なし」 5社に行政処分
(朝日新聞デジタル 2022年5月25日)
業界の信頼回復のためにも誠意のある対応を
異なる商品で5社一斉の処分は、「投てき消火用具」を扱う業界にとって大きく信用を損なう問題だと思います。
各社とも、誤認排除措置としての一般消費者に対する正式な告知は現時点(2022年6月3日)でなされておらず、返品返金対応も行っていません。命令を受けた時点で違反表示を継続していたボネックスとファイテックは、自社HPにおいてお詫び文を公表し、次のように述べています。
なお、措置命令は、製品の表示に対するものであり、製品性能に対するものではありません。
「お詫びとお知らせ」
従来からご案内のとおり弊社製品は、「日本消防検定協会」の試験に合格した証として「NSマーク」を取得しておりますので、消火性能につきましては引続き安心してお取り扱いいただけます。
((株)ボネックス 2022年5月24日)
http://www.bonex.co.jp/product/Apology_and_notice20220524.pdf
本措置命令に関する一部の報道において、「投げる消火用具、根拠なし」等のように、本措置命令において、火災の規模にかかわらず、「一切の効果について全く根拠がないと判断されたとの誤解を与えかねない内容」が見受けられます。
しかし、上記のとおり、本措置命令において根拠がないと判断されたのは、あくまで本措置命令において認定された表示・効果の範囲に限定されていたにもかかわらず、上記報道内容は、その点を明記することなく、単に、「投げる消火用具、根拠なし」等と記載するにとどまっており、明らかに、本措置命令の認定内容を超えるものです。
「消費者庁措置命令のファイテックの「誤報道」についてのお詫び」
((株)ファイテック 2022年5月30日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000048262.html
消火用具商品において、合理的根拠なく過大な消火効果をうたいながら、「消火性能については引続き安心して使える」、「一切の効果について全く根拠がないと判断されたとの誤解を与えかねない」と主張するのであれば、せめて、どこまでの性能が保証されているのか、示すべきではないかと思います。
消費者からの返品返金要求回避策とみられかねません。
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