割引セールの「通常価格」表示に注意!(株)ブルースターのクリーニングセールチラシに景表法措置命令(消費者庁:2019年8月7日)

消費者庁は8月7日に、盛岡市のクリーニング業(株)ブルースターのクリーニング
サービスのセール企画に関する表示に対し、景品表示法の措置命令を行いました。
販売実績のない比較対象価格による有利誤認表示とみなされました。

消費者庁及び公正取引委員会事務総局東北事務所の調査による事案です。

———-
株式会社ブルースターに対する景品表示法に基づく措置命令について
(2019年8月7日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_190807_01.pdf
———-

比較対象価格として、景品表示法上、「通常」価格と表示して良い販売期間の目安について確認します。


【違反内容】
対象役務:
クリーニングサービスの各役務(29品目)
(デザインブラウス、カーディガン、フリース、セーター、ズボン、ヒダスカート、
ワンピース、背広、ジャケット、ジャンパー、半コート、コート、ダウンジャケット、
ダウンコート、スキーウエアー(上)、スキーウエアー(下)、学生服(上)、セーラー服(冬)、
タオルケット(S)、毛布S(1枚物)、毛布S(合わせ)、毛布丹前、こたつ布団(正掛)、
こたつ布団(長掛)、和布団S、羊毛布団S、羽毛布団S、羽毛布団肌掛け、ジュータン)

店舗:
ブルースター
「ザ・ビッグ浪岡店」「末広店」「ベニーマート黒石店」「田町店」「広田店」
「大鰐マックスバリュ店」「みたけ工場店」「滝沢店」「花輪店」「毛馬内店」「小坂店」
※店舗のうち、「田町店」及び「広田店」については、2019年2月16日付けで、(有)ツルヤに営業譲渡しており、「小坂店」については同年3月30日付けで、「ザ・ビッグ浪岡店」については同月31日付けで、それぞれ閉店している。

表示媒体:
新聞折込チラシ

表示期間:
2016年4月~2018年5月

表示内容:
a) 例えば、「[通常]600円+[撥水加工]500円=1,100円~」及び「撥水加工料込み!!550円~」等と表示。
対象役務について、実際の提供価格に比較対照価格を併記することにより、あたかも、比較対照価格は、通常提供している価格であり、実際の提供価格が当該通常提供している価格に比して安いかのように表示していた。

b)例えば、「ダウン オール半額」及び「ダウンジャケット 900円」、「ダウン 30%OFF」等と表示。
対象役務について、あたかも、通常提供している価格から半額又は30パーセント割り引いて提供するかのように表示していた。

実際:
比較対照価格及び、半額という割引額又は30パーセントという割引率の算出の基礎となる価格は、最近相当期間にわたって提供された実績のないものであった。

【表示例a】


本事案では架空の「通常」価格が設定されていました。
販売実績がある場合の比較対象価格として、景品表示法上、「通常」価格と表示して良い販売期間の目安には、どのような基準があるのでしょうか。

公正取引委員会が発表している「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(※)から説明しましょう。

●比較対照価格として「通常」価格と表示するには、最近相当期間にわたって販売された実績があることが必要

《「最近相当期間にわたって販売されていた価格」か否かの判断基準》
一般的な目安として、

・当該価格表示を行う最近時(キャンペーン開始時点からさかのぼる八週間が目安)において、当該価格で販売されていた期間が当該商品の販売されていた期間の過半を占めていること。

・当該商品が販売されていた期間が八週間未満の場合には,当該期間において、同様の基準で検討される

ただし、前記の要件を満たす場合であっても、
・当該価格で販売されていた期間が通算して二週間以上であること。
・当該価格で販売された最後の日から二週間以上経過していないこと。

「相当期間」について:
必ずしも連続した期間に限定されるものではなく、断続的にセールが実施される場合であれば、比較対照価格で販売されていた期間全体として評価する。

「販売されていた」とは:
事業者が通常の販売活動において当該商品を販売していたことをいい,実際に消費者に購入された実績のあることまでは必要ではない。
他方、形式的に一定の期間にわたって販売されていたとしても、単に比較対照価格とするための実績作りとして一時的に当該価格で販売していたとみられるような場合には,「販売されていた」とはみられない。

(※)
不当な価格表示についての景品表示法上の考え方
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_35.pdf
※現在、景品表示法は消費者庁に移管されていますが、上記ガイドラインは適用されています。

以下に、価格表示に関する景品表示法の解説記事をまとめました。
どうぞご参考ください。

≪参考記事≫

【景表法】割引率・割引額表示の注意点

【景表法】二重価格表示の注意点~販売条件が異なる販売価格~

【景表法】二重価格表示の注意点~競争事業者の販売価格~

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。