液晶ディスプレイ性能表示に優良誤認、DMM.ComとODM供給先UPQに景表法措置命令(消費者庁:平成30年3月29日)

消費者庁は3月29日、(株)DMM.Com及び(株)UPQに対し、両社がそれぞれ供給する液晶ディスプレイに関する表示について、景品表示法違反(優良誤認) の措置命令を行いました。

両社は、対象商品が1秒間に60フレームで構成される映像を、120フレームで構成されるより滑らかな映像にして映し出す機能を備えているかのような表示をしていましたが、実際にはそうした機能は備わっておらず、優良誤認表示とみなされました。

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株式会社DMM.com及び株式会社UPQに対する景品表示法に基づく措置命令について
(平成30年3月29日 消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180329_0001.pdf
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DMM.comは、本件2商品をUPQよりODM(相手先商標製品設計製造)供給を受け販売していました。ODM生産方式は、製造する製品の設計から製品開発までを受託者(UPQ) が行いますが、DMM.Comは自社ウェブサイトの表示内容を自ら決定しています。

報道、両社が発表したお詫び告知文より、誤りを生じた経緯について確認します。



1. DMM.com
【対象商品・表示期間】
(1)DMM.make 50インチ 4Kディスプレイ 平成28年11月15日~平成29年4月12日
(2)DMM.make 65インチ 4Kディスプレイ 平成28年11月25日~平成29年4月12日

【表示媒体】
自社ウェブサイト

【違反内容】
表示内容:
あたかも、対象商品が、前後のフレームから中間的なフレームを新たに生成し、映像を補完する倍速駆動と称する技術により、1秒間に60フレームで構成される映像を1秒間に120フレームで構成される、より滑らかな映像にして映し出す機能を備えているかのように示す表示をしていた。

表示例:
・「4K/60p,120Hz駆動,HDCP2.2対応の50/65インチ 4Kディスプレイをお求めやすい価格でご提供。」
・「4K/60p入力に対応 さらに120Hz倍速駆動で、4K映像をなめらかに!」
・「1秒間に60フレームの4K映像を表示する4K/60pに対応。さらに120Hz駆動でフレームを補完し、よりなめらかな映像を映し出します。」
・「4K/60p(1秒間に60フレーム)」「前後から予測して新しい映像を生成」「120Hz倍速駆動(1秒間に120フレーム)」「滑らかな映像表示」と付記された3枚の画像のそれぞれの間に新たな画像が差し込まれ合計5枚の画像となることを示す図を掲載。

実際:
対象商品には、1秒間に60フレームで構成される映像を1秒間に120フレームで構成される映像にして映し出す機能はなかった。

2. UPQ
【対象商品・表示期間】
(1)Q-display 4K50 平成27年8月6日~平成28年2月24日
(2)Q-display 4K50X 平成28年2月29日~平成29年4月12日
(3)Q-display 4K65 平成28年11月1日~同月6日

【表示媒体】
自社ウェブサイト

【違反内容】
表示内容:

あたかも、対象商品が1秒間に60フレームで構成される映像を1秒間に120フレームで構成される、より滑らかな映像にして映し出す機能を備えているかのように示す表示をしていた。

表示例:
・「4K/60p、120Hz駆動 HDCP2.2対応の50インチ4Kディスプレイ」
・「国内最安値級の50インチ4K/120Hzディスプレイ。」
・「65インチ 4Kディスプレイ 4K/60p、120Hz駆動 HDCP2.2対応」と掲載。

実際:
対象商品には、1秒間に60フレームで構成される映像を1秒間に120フレームで構成される映像にして映し出す機能はなかった。

報道によると、誤りを生じた原因について次のように説明されています。

消費者庁によると、製品の実際の開発はDMMとUPQ以外の事業者が行なっていた。製品の動作チェックは3社間で行なっていたが、動作確認試験の結果を読み間違えてしまい、虚偽の表示をしてしまっていた、としている。加えて、UPQはディスプレイの機能について知識が浅く、試験結果や内容について確認が行き届いていなく、DMMについても、製品の仕様などについてはUPQに任せきりだったという。そのため、表示段階で、機能を裏付ける資料などの確認が不足していたとしている。

◆ディスプレイの「倍速処理」に根拠なし、DMM.comに措置命令
(通販通信 2018年3月29日)
https://www.tsuhannews.jp/50528

両社が発表したお詫び告知文では、次のように本措置命令を受けるまでの経緯について記載されています。

UPQの対応:
2017年4⽉7⽇に、本表⽰の誤りについて消費者庁表⽰対策課に⾃主申告した。
2017年4⽉12⽇に、HP上で、UPQ ディスプレイ製品 3機種のリフレッシュレート表記を「誤記」と発表し、購入者に2000円分のAmazonギフト券を提供。
自主申告より約1年間の調査により、2018年3月29日に、消費者庁表⽰対策課にて、本リフレッシュレートの誤表記は、本製品群に対する専門知識のない消費者に向けて過剰性能を有しているように誤認を与える表⽰であったという判断、及びUPQの開発体制および表⽰告知の検証体制是正の命令を受けた。
2018年3⽉30⽇に、本措置命令を受けたこと及び今後の対応予定を発表。
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◆UPQディスプレイ製品3機種のリフレッシュレート表記の誤りについてのお詫びとお知らせ
(株式会社UPQ HP 2017年4月12日)
https://upq.me/jp/news/20170412/
◆株式会社UPQ製液晶ディスプレイ3機種にかかる、不当景品類及び不当表示防止法第7条第1項に基づく措置命令対応予定につきまして
(株式会社UPQ HP 2018年3月30日)
https://upq.me/jp/news/20180330/
———————–

DMM.comの経緯:
2017年4⽉12⽇に、HP上で、対象商品について製品仕様の誤表記(120Hz倍速駆動に未対応)と発表し、返品・返金対応を行った。
2018年3月29日に、HP上で、本措置命令を受けたことを発表。
———————–
◆DMM.make DISPLAY 65インチ 4Kディスプレイ・50インチ 4Kディスプレイの製品仕様誤表記のお詫びと訂正
(株式会社DMM.com HP 2017年4月12日)
https://dmm-corp.com/press/press-release/7629
◆ディスプレイの表示に関する消費者庁からの措置命令について
(株式会社DMM.com HP 2018年3月29日)
https://dmm-corp.com/press/press-release/22694
———————–

販売する製品をODM生産で、製品の設計から製品開発までを受託者に委ねる場合、性能評価や品質管理を販売側においてチェックする機能を持つ必要があります。

景品表示法における不当表示は無過失責任となりますので、仕入れ先のミスであっても表示責任のある販売事業者が処分の対象となります。
また、2014年12月1日より施行された法改正により、管理体制整備も義務付けられるようになりました。

課徴金については、「課徴金対象期間」の売上高が5000万円以上であれば賦課される可能性があります。違反行為を行った事業者が、「相当な注意を怠ったものではないと認められた場合」は免除されますが、今回のケースでは難しいかもしれません。
ただし、UPQは消費者庁の調査が入る前に違反行為を自主申告しているため、課徴金額の2分の1減額を受けられる可能性があります。(DMM.comについては不明)
DMM.comは、返金対応を行っていますが、課徴金減額を受けるためには「実施予定返金措置計画」を作成し、消費者庁長官の認定を受け、その計画に沿って適正な返金手続を行う必要があります。

≪参考記事≫

・景表法課徴金は対象売上高の3%、課徴金賦課の対象外となるケースは?

・グリーンコープ連合に景表法措置命令。仕入れ先メーカーの品質管理ミスで
(消費者庁:2018年3月27日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。