消費者庁は1月26日に、中国のオンラインゲーム会社アワ・パーム・カンパニー・リミテッドが供給するオンラインゲーム「ザ・キング・オブ・ファイターズ’98アルティメットマッチ オンライン」に関する表示に対し、景品表示法の措置命令を行いました。
オンラインゲーム上の有料ガチャの確率表記について、実際の確率よりも高い確率であるかのような有利誤認表示とみなされました。
オンラインゲーム上の有料ガチャに対する行政の規制と業界のコンプライアンスへの取り組みも紹介します。
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アワ・パーム・カンパニー・リミテッドに対する景品表示法に基づく措置命令について
(平成30年1月26日 消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180126_0001.pdf
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≪有利誤認表示≫
【対象役務】
平成28年12月31日から平成29年1月4日までの期間に実施した、「THE KING OF FIGHTERS ‘98 ULTIMATE MATCH Online」内で使用する「クーラ」というキャラクターを提供する「クーラ限定ガチャ」という役務
【表示媒体・期間】
「THE KING OF FIGHTERS ‘98 ULTIMATE MATCH Online」内の「クーラ限定ガチャ」の取引画面
表示期間:
平成28年12月31日から平成29年1月4日までの間
【違反内容】
「クーラ」の画像とともに、「ガチャでピックアップの格闘家があたる」、「クーラ」、「出現確率:3%」、「購入」並びに「万能破片と格闘家確定」及び「10回購入」と記載することにより、あたかも、
・「クーラ限定ガチャ」を1回ごとに取引する場合には、取引1回当たりの「クーラ」の出現確率が3ーセントであるかのように
・10回分一括して取引する場合には、「万能破片」というアイテムの出現に割り当てられる1回を除く、9回における取引1回当たりの「クーラ」の出現確率が3パーセントであるかのように表示していた。
実際:
・「クーラ限定ガチャ」を1回ごとに取引する場合の取引1回当たりの「クーラ」の出現確率は、0.333パーセントであった。
・ 10回分一括して取引する場合の「万能破片」というアイテムの出現に割り当てられる1回を除く9回における取引1回当たりの「クーラ」の出現確率は、9回のうち8回については0.333パーセントであった。
【表示例】
「THE KING OF FIGHTERS ‘98 ULTIMATE MATCH Online」内の「クーラ限定ガチャ」の取引画面の表示
「THE KING OF FIGHTERS ’98 ULTIMATE MATCH Online」のガチャに確率表記については、以前より景表法有利誤認の疑いがあるとして、消費者との間で法的トラブルとなっていました。
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スマホ版「KOF」景表法違反の疑いで訴訟問題に発展か さらに特商法違反も発覚
(ねとらぼ 2017年03月26日)
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1703/25/news038.html
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近年、オンラインゲーム上の有料ガチャ(ランダム型アイテム提供方式)をめぐっては、景品表示法上の問題が指摘されてきました。
平成 24 年 6 月 28 日に、「コンプガチャ」について消費者庁が「『カード合わせ』に関する景品表示法(景品規制)の運用基準」が公表。(※1)
最近では、平成29年7月19日に大手ゲーム会社ガンホーに対して、有料ガチャによって提供されるキャラクターが表記と異なる仕様だったとして、優良誤認での措置命令が出されました。(※2)
(※1)
「カード合わせ」に関する景品表示法(景品規制)の運用基準の公表について
(消費者庁:平成24年6月28日)
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/120628premiums_2.pdf
インターネット上の取引と「カード合わせ」に関するQ&A(平成25年1月16日)
http://www.caa.go.jp/representation/keihyo/qa/cardqa.html
(※2)
・大手ゲーム会社ガンホー、グリーに景表法措置命令!各社のお詫び対応は?
(消費者庁:平成29年7月19日)
日本オンラインゲーム協会(JOGA)では、こうした法規制に対応すべく、2016年4月にJOGA 加盟事業者に対し、以下のような新ガイドラインを発表しています。
◆オンラインゲームにおけるビジネスモデルの企画設計および運用ガイドライン
https://japanonlinegame.org/wp-content/uploads/2017/06/business_method_guideline_2016.pdf
消費者庁運用基準の示す「カード合わせ」に直接該当するもの、該当するおそれのあるもの、原則として問題のないものについて、それぞれ、ゲームシステムおよびビジネスモデルの類例とその検討を示し、注意喚起するもの。
◆ランダム型アイテム提供方式を利用したアイテム販売における表示および運営ガイドライン
https://japanonlinegame.org/wp-content/uploads/2017/06/JOGA20160401.pdf
有料ガチャの設定に関する事項には、「ガチャアイテムの種別毎に、その提供割合を表示する。」と記載されています。
また、禁止事項として、景表法の優良・有利誤認、懸賞景品制限について明記されています。
また、Appleでは、アプリケーションプラットフォームであるApp Storeのアプリ開発者向け「App Store審査ガイドライン」日本語版を改訂し、「有料ガチャ」で、各種アイテムの入手確率を明記するように定めました。
「バーチャルアイテムをランダムに購入できるアプリケーションでは、各種アイテムの入手確率を明記して、ユーザーが購入前に確認できるようにしてください」という一文を追加しています。
オンラインゲーム業界では、ゲームコンテンツの魅力追求の両輪として、法令遵守体制の構築が求められています。
≪関連記事≫
・雑誌の懸賞水増しで3件目。アイアのパズル雑誌に有利誤認措置命令(消費者庁:平成27年12月8日)
・竹書房の漫画雑誌懸賞企画で有利誤認措置命令(消費者庁:平成27年3月13日)
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