「葛の花」16社に、機能性表示食品で初の景表法措置命令。届出内容と表示の整合性(消費者庁:平成29年11月7日)

11月7日、消費者庁は葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分として、痩身効果を標ぼうする機能性表示食品の販売事業者16社に対し、16社が供給する機能性表示食品の表示について、景品表示法違反(優良誤認) の措置命令を行いました。
痩身効果に対する優良誤認は不実証広告規制(※)を用いた処分となっています。

今回の事案は、以下のような点で大変注目を集めています。

・機能性表示食品で初の景表法措置命令
・食品分野で過去最多の16社一斉の措置
・措置命令処分前の異例のお詫び社告

処分のポイントと留意点を確認します。

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葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とする機能性表示食品の
販売事業者16社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 平成29年11月7日)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0001.pdf
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0021.pdf
———
(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


●違反概要
【対象事業者・商品】

(1) 措置命令において、一般消費者に対する誤認排除措置、再発防止及び不作為を命じる事業者(4社)
(株)太田胃散、(株)オンライフ、(株)CDグローバル、(株)全日本通教

(2) 既に一般消費者に対する誤認排除措置を講じており、措置命令において、再発防止及び不作為を命じる事業者(12社)
ありがとう通販(株)、(株)ECスタジオ、(株)協和、(株スギ薬局、(株)ステップワールド、(株)テレビショッピング研究所、(株)Nalelu、(株)ニッセン、日本第一製薬(株)、
(株)ハーブ健康本舗、ビルボックスジャパン(株)、(株)やまちや

【表示媒体・期間】
ウェブサイト、新聞、雑誌、テレビ放送、ラジオ放送、自社商品同梱チラシ、フェイスブック、ツィッター、会報誌、自社ウェブサイト上の紹介動画、店舗内に設置したポップ・ボード・配布リーフレット、ダイレクトメール、等

16社の表示媒体及び表示期間(消費者庁発表資料PDF):
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0002.pdf

【違反内容】
a) 痩身効果に係る表示(16社)
表示内容:
あたかも、対象商品を摂取するだけで、誰でも容易に、内臓脂肪(及び皮下脂肪)の減少による、外見上、身体の変化を認識できるまでの腹部の痩身効果が得られるかのように示す表示をしていた。

実際:
16社に対し、それぞれ当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、16社から資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

《根拠がないとされたポイント》
・根拠データではBMIが25~30という軽度の肥満の被験者が対象であるにもかかわらず、それに準ずる広告表示がなされておらず、あたかも誰にでも効果があるような表現が用いられていたこと。
・根拠データでは、運動と食事制限によって、摂取エネルギーよりも消費エネルギーが上回る状態を維持することが条件。(運動では、12週間平均で約8000~9000歩/日で、これは通常より2000歩/日多い)
・実験結果の約1Kg減少、ウエストで約マイナス1cmは通常1日の変動範囲と考えられる。

16社の表示概要(消費者庁発表資料PDF):
(株)太田胃散
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0003.pdf
(株)オンライフ
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0004.pdf
(株)CDグローバル
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0005.pdf
(株)全日本通教
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0006.pdf
ありがとう通販(株)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0007.pdf
(株)ECスタジオ
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0008.pdf
(株) 協和
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0009.pdf
(株)スギ薬局
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0010.pdf
(株)ステップワールド
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0011.pdf
(株)テレビショッピング研究所
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0012.pdf
(株)Nalelu
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0013.pdf
(株)ニッセン
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0014.pdf
日本第一製薬(株)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0015.pdf
(株)ハーブ健康本舗
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0016.pdf
ビルボックスジャパン(株)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0017.pdf
(株)やまちや
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0018.pdf

b)注文数量に係る表示((株)CDグローバル)
表示媒体・期間:
自社ウェブサイト、フェイスブック、ツィッター

表示媒体及び表示期間(消費者庁発表資料PDF):
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0019.pdf

表示内容:
あたかも、本件商品の販売数量に関する具体的な予想を立て、当該予想販売数量を上回るほどの相当程度多数の注文を受けているかのように示す表示をしていた。

実際:
実際には、具体的な数値予想を立てておらず、表示期間中における注文数は僅少であった。

【措置命令について】
通常通り、一般消費者に対する誤認排除措置、再発防止及び不作為を命じる事業者は、(株)太田胃散、(株)オンライフ、(株)CDグローバル、(株)全日本通教の4社。

他の12社(ありがとう通販(株)、(株)ECスタジオ、(株)協和、(株スギ薬局、(株)ステップワールド、(株)テレビショッピング研究所、(株)Nalelu、(株)ニッセン、日本第一製薬(株)、(株)ハーブ健康本舗、ビルボックスジャパン(株)、(株)やまちや)は、措置命令を受ける前に、既に一般消費者に対してする誤認排除措置(※)を講じたとして、再発防止及び不作為のみを命じた。

(株)ニッセンを除く11社は、対象商品の内容について、優良誤認表示をしていた事実を、それぞれ日刊新聞紙2紙に掲載した。
(株)ニッセンは、平成29年5月12日、対象商品の販売を終了し、同年8月30日、全購入者に対して優良誤認表示をしていた事実を通知するとともに、自社ウェブサイトに同内容を掲載し、同年9月1日から同月6日にかけて、全購入者に対して購入額の全額返金の措置を講じた。

●体験談広告の打消し表示について
下記の12社においては、体験談に対する打消し表示が記載されていましたが、当該表示は、一般消費者が体験談から受ける効果に関する認識を打ち消すものではない、とみなされています。

(株)太田胃散、(株)オンライフ、(株)全日本通教、ありがとう通販(株)、(株)協和、(株)ステップワールド、(株)テレビショッピング研究所、(株)Nalelu、(株)ニッセン、日本第一製薬(株)、ハーブ健康本舗、(株)やまちや

打消し表示例(一部):
「個人の見解であり効果を保証するものではありません。」(株)ステップワールド
「体験は個人の感想であり、実感には個人差があります」(株)ニッセン
「上記臨床試験結果は平均値であり、すべての方に効果を保証するものではありません。」日本第一製薬(株)
「※個人の感想であり、使用感には個人差があります。」(株)やまちや

消費者庁の大元慎二表示対策課長との会見では、今回の処分は、今年7月に消費者庁が公表した「打消し表示に関する実態調査報告書」による「体験談を用いる場合の留意点」を体現するものと、明言しています。
「消費者は体験談も効果と認識する。内容が実際と齟齬があれば問題。打消し表示はあったが、表示する効果を打ち消すものではなかった」

◆消費者庁 「葛の花」に措置命令、機能性で初、16社一斉処分
(通販新聞 平成29年11月9日)

●原料の製造元の責任は?
「機能性評価の内容」と「表示」の整合性がポイントとなった本件では、原料・OEMメーカーの広告への関与の問題で、葛の花エキス供給元の(株)東洋新薬の処分が注目されていましたが、今回は処分に至りませんでした。

「景表法上、必要な措置をとっていたため処分していない」

(株)東洋新薬は「あくまでも広告表現に対する措置命令であり、葛の花由来イソフラボンの科学的根拠や表示しようとする機能性(届出表示)が問題とされたのではありません。」と、見解を発表しています


消費者庁では、葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とする機能性表示食品45商品のうち、違反していた(痩身効果までうたっている)今回の16社(19商品)についてのみ処分したとしています。
消費者庁の大元慎二表示対策課長との会見で、「本制度は中小企業の活用を促すことも目的としているところ、今回の処分は制度を活用する上で萎縮を招かないか。」との記者の質問に、
「(届出の)データをしっかり見ておけば(今回違反となったような)表示は当然できない。中小といえどもデータを読み解けないということはない」
と、バッサリ。

平成27年4月の制度発足から3年目。
今後、機能性表示制度が発展し、有効活用していくうえでも、販売企業は制度の趣旨をよく理解したうえで、広告が届出の内容を逸脱しないよう、充分に注意が必要です。

《参考記事》
・スギ薬局の社告に見る、機能性表示食品の不当広告と謝罪告知のタイミング
・痩身系健康茶、ティーライフ(株)に対し景表法措置命令。体験談広告の問題点は?
(消費者庁:平成29年9月29日)

・豊胸・痩身系サプリ(株)ミーロードに対し景表法措置命令。求められる消費者への誠意ある対応(消費者庁:平成29年3月30日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。