「琉球サプリ 一望百景」マイケア、通販顧客に電話勧誘販売。不実告知とクーリング・オフの記載不備で特商法業務停止命令(3カ月)(消費者庁 2025年6月26日)

健康食品の電話勧誘販売に対する特定商取引法による行政処分です。

2025年6月25日、健康食品、化粧品等の電話勧誘販売、通信販売を行う(有)マイケア(東京都新宿区)と、事業者の取締役である前野沢郎に対して、特定商取引法違反で3カ月間の電話勧誘販売業務停止(禁止)命令と、電話勧誘販売業務の改善指示を行いました。
消費者庁の権限委任を受けた北海道経済産業局による処分事案です。

健康食品や化粧品などの美・健商材においては、通販定期購入契約に対して特定商取引法の誇大広告(12条)+最終確認画面の表示義務違反(12条の6第1項)を適用条項とした法執行が続いていましたが、本件は電話勧誘販売規制となる不実告知(21条第1項)と契約解除に関する情報の記載不備(19条第1項)による違反認定となっています。

マイケアは、通信販売で一度取引した顧客に対して自ら電話をかけて新たな商品購入を勧誘していたことから、電話勧誘販売とみなされました。電話勧誘販売においては、通信販売にはない受注時の書面の交付義務やクーリング・オフ制度の対象となる等の電話勧誘販売規制を受けることとなります。

令和五年特定商取引法施行令改正以降、通信販売と電話勧誘販売の境界線が法的に厳格に見直されており、自社の販売方法がどの取引類型の法規制を受けるのかをしっかりと把握して対応することが重要です。

本記事では処分の内容を確認しながら、通信販売と電話勧誘販売の規制内容の違いと、実務上の対応策を押さえておきましょう。

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電話勧誘販売業者【 有限会社マイケア 】に対する行政処分について
(消費者庁 2025年6月26日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/042724
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【事業者概要】
処分対象事業者:
有限会社マイケア(本店所在地:東京都新宿区)
代表者:取締役  前野 沢郎
取扱商品:
「琉球サプリ 一望百景」と称する健康食品、化粧品等
取引類型:電話勧誘販売、通信販売
事業概要:
マイケアは、テレビ番組、新聞等での広告や自社のホームページを通じて、健康食品や化粧品の通信販売を行っている。これらの商品の購入者に電話をかけ、当該電話において、マイケアが販売する商品の新たな売買契約の締結について勧誘を行っている。
当該電話により商品の売買契約の申込みを受け、売買契約を電話により締結していることから、このようなマイケアが行う商品の販売は、電話勧誘販売に該当する。

【認定した違反行為】
電話勧誘販売
同社は、次のとおり、特定商取引法に違反し、又は特定商取引法に規定する指示対象行為に該当する行為をしており、「電話勧誘販売に係る取引の公正及び購入者の利益が著しく害されるおそれがある」と認められた。

1.書面の交付義務に違反する行為(記載不備) (特定商取引法第19条第1項)
少なくとも2024年2月頃に、電話による売買契約締結時に消費者に交付した書面に、契約解除に関する事項※(クーリング・オフに関する必須記載事項)を、記載していなかった。

特定商取引に関する法律施行規則(昭和51年通商産業省令第89号)
第47条第1項第1号イからヘまで
イ.書面を受け取った日から起算して8日以内であれば、書面により申込みの撤回または契約解除が可能であること   
ロ.一部の不適切勧誘(不実告知・威迫)により契約解除が妨げられた場合でも、交付された再通知書面受領後8日以内であれば解除できること
ハ.撤回・解除は書面を発した時点で効力が生じること
ニ.クーリング・オフによる損害賠償や違約金の請求は不可であること
ホ.商品が引き渡されていた場合、その引取り費用は販売業者が負担すること
ヘ.商品が使用済でも、販売業者は使用利益相当額を請求できないこと

電話勧誘販売では「クーリング・オフ制度」が適用されますが、例外条件があります。
一度使用または消費した場合、再販が困難となる性質の消耗品(一般食品、健康食品、化粧品等)の場合は、開封または消費していない商品に限られ、使用された場合には、クーリング・オフの規定は適用されません。
ただし、このようなクーリング・オフ制限を設ける場合、事業者は以下の事項を赤枠赤字で書面に明示しなければなりません。

マイケアはこれらの事項を交付書面に記載していなかったと考えられます。

2.商品の品質に関する事項につき不実のことを告げる行為(特定商取引法第21条第1項)
少なくとも2024年2月頃に、本件売買契約の勧誘に際し、本件商品の品質について、「ルテインがなんと、業界最大量の20ミリグラムも配合されておりますので」、「ルテインは業界最大量の20ミリグラムも配合されておりますので」などと告げることにより、あたかも、本件商品が他社製品と比較して最も多くのルテインが配合された商品であるかのように告げている。
本件告知の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、マイケアから提出された資料は本件告知の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料とは認められなかった。
よって、商品の品質につき、不実のことを告げる行為であったものとみなされる。

【処分の内容】
(1)業務停止命令
内容:
電話勧誘販売に関する業務のうち、次の業務を停止すること。
1)商品の売買契約の締結について勧誘すること。
2)商品の売買契約の申込みを受けること。
3)商品の売買契約を締結すること。
期間:
 2025年6月26日から2025年9月25日まで(3か月間)

業務停止命令に違反した場合は、行為者に対して3年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はこれを併科する手続きを、法人に対しては3億円以下の罰金を科する手続きを行うこととなっています。

(2)指示
1)前記違反行為の発生原因について検証し、違反行為の再発防止策及び社内のコンプライアンス体制を構築して、これをマイケアの役員、従業員及びマイケアが勧誘行為の実施等を委託する者(再委託や再々委託等により委託先の者が更に勧誘行為の実施等を委託する者を含む。)に業務停止命令に係る業務を再開するまでに周知徹底すること。
2)2024年2月1日から2025年6月25日までの間に、本件売買契約の全ての相手方に対し、業務停止命令及び本指示の内容、不実告知の内容を、北海道経済産業局のウェブサイトに掲載される、業務停止命令及び本指示をした旨の公表資料を添付して、2025年7月25日までに書面により通知すること。
併せて、同日までにその通知結果について北海道経済産業局長宛てに書面又は電磁的方法により報告すること。

上記指示に違反した者には、6月以下の懲役又は100 万円以下の罰金、又はこれを併科、違反が法人の業務の場合には、行為者を罰するほか、その法人に対し100 万円以下の罰金が課せられます。

また、本件では、マイケアの取締役である前野沢郎に対して、同社が命ぜられた業務停止の範囲内の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含む。)を3か月間禁じる処分が下っています。

上記指示に違反した者には、個人は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人は3億円以下の罰金が科せられます。

誇大広告(12条)と不実告知(21条第1項)

景品表示法の優良有利誤認と似た特定商取引法の誇大広告(12条)と不実告知(21条第1項)について整理しました。
誇大広告(12条)
広告表示が「著しく事実に相違」または「著しく優良・有利と誤認させる」。
通信販売に限定され、「広告表示」(例:ウェブ広告、LP、チャットボットなど)による誤認誘導を対象。
不実告知(21条第1項)
勧誘時に不実のことを告げる行為(例:虚偽説明)。
対面的な勧誘行為(電話・訪問など)に適用され、「勧誘時の発言」による虚偽説明を対象。

電話勧誘販売の該当性

本事案では、マイケアが通信販売で一度取引した顧客に対して自ら電話をかけて新たな商品購入を勧誘していたことから、電話勧誘販売とみなされました
既存顧客に対するアウトバウンド電話営業であっても、事業者が電話をかけて勧誘し、その場で契約申込みや契約締結を行う場合、電話勧誘販売とみなされるおそれがあります。

それでは、通販事業者の既存顧客への電話営業は、全て電話勧誘販売とみなされるのでしょうか。
既存顧客への電話営業がすべて一律に「電話勧誘販売」として規制対象となるわけではありません。
しかし、一定の要件を満たす場合には、特定商取引法上の「電話勧誘販売」に該当します。

●特商法における「電話勧誘販売」の定義
“事業者が、電話をかけて、売買契約を締結するよう勧誘を行うこと”を電話勧誘販売と定義。(特定商取引法第2条第3項)
ポイントは、以下の2点となります。
(1)電話の目的が契約の勧誘であること
(2)主導的に電話をかけるのが事業者側であること
相手が「既存顧客」であるか否かは問いません。よって、「以前買った人だから通信販売の延長」という主張は通りません。

(1)の勧誘目的の電話とは、例えば、「過去購入者への新商品の紹介と契約提案」、「単品購入から定期購入への契約切替の提案」、「定期購入中の商品切替の提案」などが該当します。
他方、商品の発送日時確認やアフターサービスの連絡等の目的は、契約の勧誘が目的ではないため原則非該当となります。 

(2)の「電話をかけるのが事業者側であること」の要件については、消費者から「電話をかけさせる方法」も、電話勧誘販売に該当するケースがあります。
販売目的であることを告げずに電話を促す広告などによって、消費者から「電話をかけさせる方法」も、限定的に電話勧誘販売に該当することが政令により定められています。

電話受注でのアップセル・クロスセル営業に注意

2023年6月に施行された令和五年政令第二十二号による改正により、電話勧誘販売に該当する「電話をかけさせる方法」の範囲が拡大され、これまでは通信販売に該当していたものが、新たに電話勧誘販売として規制を受けることとなるケースが出てきました。
テレビや新聞、ウェブ広告などを契機とした消費者からの問い合わせ電話(受電)において、当該広告に掲載されていない別商品の購入を勧める行為は、「電話勧誘販売」に該当します。

事業者は今一度、広告の設計・電話対応スクリプト・書面交付体制を見直し、広告コンプライアンスの運用を徹底する必要があります。

電話受注の際に電話勧誘販売規制を受けず、通信販売としてクロスセルやアップセルを行いたい場合の留意点について、以下の記事で解説しています。
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≪参考記事≫

・加速する通販分野の特商法執行。最新規制動向をまとめてチェック

・通販定期購入「回数縛りなし」が、注文直後の特典利用で「縛りあり」に。悪質手口に初の処分。美容液・育毛剤の通販・電話勧誘販売(3社)に特商法業務停止命令(3カ月) (東京都 2024年11月1日)

・特商法誇大広告の処分続く。薬用歯磨きのホワイトニング効果表示で、マーキュリーに特商法業務停止命令(3カ月) (消費者庁 2024年10月31日)

・美容液のシミ改善効果+通販定期購入でHappyLifeBioに特商法業務停止命令(9カ月)。続く、誇大広告+最終確認画面の表示義務違反による法執行 (消費者庁 2024年10月16日)

・特商法でも不実証広告規制による違反認定。美容クリームのシミ・しわ改善効果+通販定期購入でSUNSIRIに特商法業務停止命令(3カ月) (消費者庁 2024年10月4日)

・電子たばこのネット通販定期購入(株)HALに特商法業務停止命令(3カ月)。「メーカー希望小売価格」に誇大広告認定 (消費者庁 2024年4月18日)

・定期購入契約が容易に解約できるかのような表示。ネット通販定期購入オルリンクス製薬に特商法業務停止命令(3カ月) (消費者庁 2024年4月10日)

・No.1不当表示、特商法の通信販売規制でも。法改正後2件目の処分、ネット通販定期購入(株)サンに業務停止命令(3カ月) (消費者庁 2024年3月15日)

・特商法改正後初の処分。ネット通販定期購入(株)LITに特商法による業務停止命令(6カ月)。積極的な消費者被害救済の指示も(消費者庁 2023年6月28日)

・ネット通販定期購入(株)BIZENTOに特商法による業務停止命令(3カ月)。「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン(案)」のパブコメ開始(東北経済産業局 2021年11月25日)

・改正特商法対応急務、「最終確認画面」の義務表示事項と定期購入での禁止表示のポイント(2022年6月1日施行)

・消費者保護の更なる強化。特商法・消契法の改正案閣議決定(平成28年3月4日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。