空間除菌用品の除菌効果表示に対する景表法措置命令 マクセルとレックにみる合理的根拠の争点と取消訴訟判断

新型コロナウィルス感染症拡大により、消毒、除菌等に対する消費者の関心が高まる中、アルコール商品、次亜塩素酸水、空間除菌用品等の除菌効果表示について措置命令が多数出されています。

令和2年度における措置命令 33 件のうち 21 件が消毒、除菌等の効果等についてのものとなっており、令和3年度に入ってからも、すでに6件の命令が出されています。そして、そのほとんどが、効能効果表示の裏付けとなる合理的な根拠が認められず、不実証広告規制による処分となっています。
空間除菌効果においては、主に、「実使用空間と条件の異なる試験空間で行われた除菌やウイルス不活化などの試験結果」を根拠としているケースが多くみられます。

ごくまれに、提出した根拠データを「表示の裏付けとなる合理的な根拠」として認めない消費者庁の判断に対して、異を唱える事業者もあります。今回、 異を唱えつつも取消訴訟の事業判断を行わなかった企業と、 執行停止の申立てを行った企業の主張と判断について確認してみました。

●取消訴訟に踏み切らなかったマクセル(株)
マクセル(株)は、コロナウイルス不活化効果をうたった「オゾン除菌消臭器」の表示に対して、2021年7月28日に景品表示法に基づく不実証広告規制による措置命令を受けましたが、措置命令を不服として、取消訴訟等の法的措置を検討すると公表していました。
しかし、2021年11月1日付で一般消費者に対する誤認排除の公示を行い、主張を撤回したこととなります。
措置命令に対するマクセルの主張と、措置命令に従った理由を確認してみます。

【措置命令を受けた内容】
例えば、
【新型コロナウイルス不活化効果を確認】
Maxell マクセル オゾン除菌消臭器 オゾネオ エアロ MXAP-AE270 20畳までの空間を快適空間に オゾンでウイルス除去を徹底サポート」、
「10月27日(火)リリース マクセル製オゾン除菌消臭器で生成した低濃度のオゾンによる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の不活化効果を確認 公立大学法人奈良県立医科大学と2例目となる共同研究を実施」等と表示。

あたかも、対象商品を使用すれば、商品によって発生するオゾンの作用により、リビングルームや玄関などの20畳までの様々な空間において、新型コロナウイルスを除去する効果が得られるかのように示す表示をしていた。

同社は消費者庁からの求めに応じ、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を提出したが、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

措置命令に関する記事はこちら:
・コロナウイルス不活化効果、20畳の実空間での裏付けなし マクセルのオゾン除菌消臭器に景表法措置命令(消費者庁 2021年7月28日)

●措置命令に対するマクセルの見解
マクセルの持ち株会社のマクセルホールディングスは、措置命令と同日7月28日付で、今回の措置命令に対して、「同製品が生成するオゾンが有するウイルス除去の効果に関して、第三者機関を通じて十分な検証の上で行われていたものと認識しているが、本措置命令による指摘事項については、内容を精査し対応を検討する」と公表。

マクセルホールディングス(株)
「消費者庁による当社子会社への措置命令に関するお知らせ」(2021年7月28日)https://www.nikkei.com/markets/company/sys/redirect_dis.aspr?ano=d10o3u&t=https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/d10o3u/

《20 畳までの空間における効果を表示するにあたって根拠とする試験および解析》
① 試験空間における本製品で発生させた平均 0.023ppm の空間オゾン濃度で 24 時間の作用時間において、シャーレに付着させた新型コロナウイルスに対する不活化効果を確認した、大学機関とマクセルが共同で行なった研究結果

② 約 20 畳の一般住居空間および約 24 畳の一般オフィス空間における本製品の運転時に、0.023ppm 以上の空間オゾン濃度(上記①のとおり、新型コロナウイルスに対する不活化効果が得られる濃度と作用時間)が維持できることを確認した、第三者機関および当社による測定結果

③ 上記①で付着ウイルスに対して実証された効果は、浮遊ウイルスに対して同等かそれ以上であることを確認した、解析結果

上記①から③を総合考慮すれば、実空間の試験ではなくとも、十分に 20 畳までの空間での効果を示す根拠として合理的なものと考えられる。
この考え方は、特定非営利活動法人 日本オゾン協会の見解「試験空間でのオゾン効果を実使用空間に適用するための条件」に基づくものであり、合理的なものである。
また、この考え方の合理性および判断に関しては、複数の学識経験者からの賛同も得ている。

特定非営利活動法人日本オゾン協会:ホームページ http://www.j-ozone.org/
「試験空間でのオゾン効果を実使用空間に適用するための条件」:
特定非営利活動法人日本オゾン協会の見解掲載ページ
http://www.j-ozone.org/common/files/top_ozone_conditions_202107.pdf

マクセルとしては、本措置命令に対して、取消訴訟等の法的措置をとることも視野にいれて対応を検討する。
マクセルホールディングス(株)
「消費者庁による措置命令に対する見解について」(2021年7月30日)
https://ssl4.eir-parts.net/doc/6810/ir_material20/165945/00.pdf

———–

マクセルの公表した試験及び解析の内容だけでは詳細を確認することはできませんが、「24 時間の作用時間において、シャーレに付着させた新型コロナウイルスに対する不活化効果」は、実使用空間で想定される環境条件であるとは認められにくく、また、付着ウイルスに対して実証された効果が、浮遊ウイルスに対して同等以上の効果が得られた解析結果の内容も気になるところです。

措置命令から約3か月経過した11月1日に、消費者への誤認排除の公示と、株主・投資家向け情報として措置命令に従う旨の公示とがホームページに掲載されました。
株主・投資家向の公示には、以下のように説明しています。

「今般、本措置命令が当社の事業に与える影響、及び仮に訴訟提起した際の費用等を考慮し、本措置命令に従い、社告及び同内容の当社ウェブサイトへの掲載を行った」

マクセル(株)
消費者庁からの措置命令についてのお詫びとお知らせ〈2021年11月1日〉
https://ssl4.eir-parts.net/doc/6810/ir_material20/170391/00.pdf

消費者庁による措置命令への対応に関するお知らせ 〈2021年11月1日〉
https://ssl4.eir-parts.net/doc/6810/tdnet/2038511/00.pdf

表示の根拠の合理性についての見解は示されておらず、あくまで訴訟提起にかかるコストと、今回の措置命令による課徴金やブランド棄損に伴う損失を天秤にかけたということでしょうか。
課徴金の金額も気になります。

他方、措置命令に対する取消訴訟の道を選択した事業者もあります。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。