サブスクサービスを長期的に利用継続してもらうために大切なこと

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、「おうち時間」が増える中、動画や電子書籍、ゲームなどの定額配信といったサブスクリプション・サービスを利用する人も増えているのではないでしょうか。

消費者庁が2019年11月の「第35回インターネット消費者取引連絡会」で公表したサブスクリプション・サービスの利用状況に関するアンケート調査(※1)によると、サブスクリプション・サービスの認知度は25.9%で、全体の1/4程度にとどまるものの、「知っている」者のうち利用経験者は58.9%。利用意向者を加えると83%と関心度の高さがうかがえます。
他方、サブスクリプション・サービスの利用者のうち、解約経験者は51.3%となっています。

●サブスクリプション・サービスの利用経験
サブスクリプション・サービスを「知っている」者は25.9%。そのうち、利用経験を有する者が58.9%。 利用経験はないものの、今後の利用意向を有する者が24.1%。

緊急事態宣言の解除後も「新しい生活様式」が求められる中、関心が高まる「サブスクリプション・サービス」について、アンケート調査から利用状況を確認し、顧客に長期的にサービスを利用継続してもらうための留意事項を考えます。

●サブスクリプションサービスの利用状況に関するアンケート
・利用しているサブスクリプション・サービスの種類
・ひと月あたりのサブスクリプション・サービスの支払金額
・サブスクリプション・サービスの利用理由
・サブスクリプション・サービスを申し込む際に確認した点
・サブスクリプション・サービスを利用するにあたって困った点
・サブスクリプション・サービスを解約した経験
・サブスクリプション・サービスの解約時に困った点

※「サブスクリプション・サービス」を「利用したことがある」と回答し、利用しているサブスクリプション・サービスを「自身で契約した」と回答した520人の回答。


●利用しているサブスクリプション・サービスの種類
現在、利用しているサブスクリプション・サービスのうち多い順に、「動画定額配信サービス」(79.2%)、「音楽定額配信サービス」(44.8%)、「電子書籍・雑誌・コミック定額配信サービ ス」(28.3%)、「ソフトウェア定額利用サービス」(15.4%)、「ゲーム定額配信サービス」(11.2%)。
非デジタル系の定額利用サービスの利用は、3%台以下。

●ひと月あたりのサブスクリプション・サービスの支払金額
「無料(お試し期間内)」(7.7%)、「1,000円以下」(43.3%)であり、1,000円以下の利用者が回答者全体の約半数を占める。
「2,000円以下」(22.5%)、「3,000円以下」(10.6%)。

●サブスクリプション・サービスの利用理由
「多くの商品・サービスを利用できる」(57.3%)、「安価に利用で きる」(56.5%)、「使いたいときにだけ利用できる」(41.7%)が多い。
「気がついたらサブスクリプション・サービスだった」という者が6.9%存在。

●サブスクリプション・サービスを申し込む際に確認した点
「価格、割引条件」(76.0%)、「支払方法」(52.3%)、「利用条件」(46.0%)は半数近くの利用者が確認。
一方、「解約条件」(26.5%)、「解約方法」(23.5%)の確認は1/4程度。 「事業者の所在地、連絡先」は8.8%、「取引規約、利用規約」の確認は7.9%にとどまる。

●サブスクリプション・サービスを利用するにあたって困った点

サブスクリプション・サービスを利用するにあたって61.3%が困ったことがある(「特に困ったことはない」は38.7%)。
具体的な内容は以下の通り。

「使い切れなかった/あまり利用できなかった」(26.9%)
・高い利用料金を支払っているわりには、あまり利用できなかった。(女性30代)
・忙しかったりすると使い切らずにいることがあり、もったいないと感じる。(女性40代)

「自分にあった商品等が提供されなかった」(17.3%)
・自分の好みにあった作品が見つけにくくて困ったが特に何もしていない。(女性50代以上)
・自分の体型を伝えているのに全くサイズが合わないものがきたことがあった。(女性40代)

「別料金が必要なもの、利用できないもの等があった」(16.5%)
・思っていたより定額で観れるものが少なく、課金が必要だった(女性30代)

「お試し期間中に解約をし忘れた」(13.1%)
・無料期間でサービスを利用していていつの間にか無料期間が過ぎており、月額の支払いが発生していて、解約しようとしたが解約方法が見つからず、 数ヶ月使っていないのに月額を払い続けることになった。(女性20代)

「解約方法等の説明を探せなかった」(9.6%)
・ 解約しようと思った際に、契約期間(月極めなのか契約日基準なのか)や解約方法がわかりづらかった。(男性30代) –
・解約方法がわかりにくかった。インターネットで解約方法を調べて対応した。(女性20代)

「サービス等の提供数が足りなかった」(9.0%)
・音楽聞き放題とのうたい文句だったが、思ったほど曲数がなかった(男性50代以上) – ・カーシェアリングサービスを利用していたが、車が人気でなかなか予約が取れず、結局使っていない。(女性20代)

「その他」(1.2%)
・解約をしたと思ったのに,サービスが自動的に複数契約になっていたため、1つ解約しても基本利用料などがかかって大損。契約自体は1回で行われたものなので、その時に一括で複数サービスを契約となり、解約は1つ1つ行わなければならないというのはやめてほしい。(男性40代)
・いつの間にか契約に誘導されていて、気がついたら請求が来ていた。(女性40代) –
・解約したいが当時、登録していたメールアドレスが不明のため、未だ続けている。電話での問い合わせ先もないため、困っている。(男性30代)

●サブスクリプション・サービスを解約した経験
サブスクリプション・サービスを解約した経験を51.3%が有する。

●サブスクリプション・サービスの解約時に困った点
サブスクリプション・サービスの解約時に60.3%が困ったことがある(「特に困ったことはない」は39.7%)。
「解約方法がわからなかった」(39.3%)、「解約の期限となる日がわかりにくかった」(21.0%)、「解約期限に間に合わず、翌月の料金も請求された」(13.5%)、「解約をする際の連絡(電話・メール)がとりづらかった」(9.4%)。

顧客に長期的にサービスを利用継続してもらうためには
約半数の利用者がサブスクリプション・サービスを解約した経験がある中、離脱率を抑え、長期的にサービスを利用してもらうためには、CX(顧客体験価値)を高める努力が求められます。サービス利用において利用者が困った点にフォーカスしてみましょう。

「あまり利用できなかった」「自分にあった商品等が提供されなかった」については、顧客とのコミュニケーションをとることで、利用を促したり、なぜ利用されないのかを分析することが重要です。

「別料金が必要なものがあった」「サービス等の提供数が足りなかった」については、消費者に対する広告の優良誤認表示が懸念されます。利用者が安心して継続サービスを受けるためには、サービス利用に関する条件などを利用者目線で分かりやすく表示することが求められます。
過去に、(株)TSUTAYAの動画配信サービスに対して優良誤認表示による措置命令と、課徴金納付命令が行われています。

「〇〇放題」に注意!(株)TSUTAYA動画配信サービス、光回線インターネット接続サービスに対し景表法措置命令(消費者庁:平成30年5月30日)

・(株)TSUTAYA動画配信サービス、1億1,753万円の課徴金納付命令(消費者庁 平成31年2月22日)

「お試し期間中に解約をし忘れた」「解約方法等の説明を探せなかった」といった問題は、顧客に不信感を持たせることになります。利用者が安心して継続サービスを受けるためには、サービス利用に関する条件だけでなく解約方法なども含め、利用者目線で分かりやすく表示し、問い合わせ時の迅速な顧客対応が必要です。

サブスクリプション・サービスは、事業者に持続的で安定的な収益をもたらすビジネスモデルです。それは、消費者と事業者の信頼関係によって成立します。消費者に対する誠実さが最も重要であり、結果的に消費者の信頼は高まり、解約リスクは減少します。
事業者にとっては毎月一定の売り上げが固定的に上がることから、消費者目線を忘れがちですが、常に消費者ファーストで信頼関係を維持することが求められるといえるでしょう。

(※1)
(第35回インターネット消費者取引連絡会(2019年12月))
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/meeting_materials/review_meeting_002/018864.html
「サブスクリプションサービスの利用状況に関するアンケート結果 2019年12月9日」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/meeting_materials/assets/internet_committee_200205_0003.pdf
調査期間:2019年11月14日(木)~11月15日(金)
調査方法:Webアンケート
調査対象:20歳以上のインターネット利用者
【スクリーニング調査】一般消費者
【本調査】サブスクリプション・サービスを利用したことがあり、自身で契約した経験を有する者。定期的に化粧品や食品等が届く、定期購入は除く。
また、インターネット等を活用せずに、従来から提供されている新聞・雑誌の定期購読、通信サービス・携帯電話の契約、賃貸契約等は除く。
割付条件:
性別(男性・女性)×年代(20代、30代に各78人、40代、50代以上に各52人)で割付
有効回答数:【スクリーニング調査】9,600人 【本調査】520人

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。